爆発物取締罰則に関する違憲主張を欠前提で処理した事例
憲法19条,憲法31条
判旨
爆発物取締罰則は現行憲法下でも有効であり、その目的規定は明確性の原則に反せず、思想・信条自体を処罰するものでもないため、憲法31条及び19条に違反しない。
問題の所在(論点)
爆発物取締罰則にいう「治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスル目的」という構成要件は、曖昧不明確として憲法31条に違反するか。また、同罰則は思想・信条を処罰するものであり憲法19条に違反するか。
規範
1. 刑罰法規の文言が曖昧不明確として憲法31条に違反するか否かは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめる基準が読み取れるかによって決すべきである。 2. 刑罰の軽重は、基本的には立法政策の問題であり、憲法の適否の問題ではない。 3. 法が特定の主観的目的を要件とする場合であっても、それが思想そのものを処罰する趣旨でない限り、憲法19条には違反しない。
重要事実
被告人が、爆発物取締罰則違反の罪で起訴された事案である。弁護人は、同罰則が明治24年に制定された古い太政官布告を承継したものであることや、その構成要件である「治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスル目的」という文言が曖昧であり、正当な表現活動や思想・信条を抑圧するおそれがあるとして、憲法31条(適正手続き・明確性の原則)及び19条(思想・良心の自由)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 「治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスル目的」という概念は、公共の安全と平穏を害し、あるいは個人の生命、身体、財産を侵害する意図を指すものとして、通常の判断能力を有する一般人にとって不明確なものとはいえない。したがって、明確性の原則に反しない。 2. 同罰則は、爆発物を用いた具体的な危害行為やその危険性を処罰の対象とするものであり、人の内面における思想や信条自体を処罰の対象としているわけではない。したがって、思想・良心の自由を侵害しない。 3. 同罰則が定める法定刑についても、爆発物による被害の重大性に鑑みた立法政策の範囲内である。
結論
爆発物取締罰則は、憲法31条及び19条に違反せず、現行憲法下においても法律としての効力を有する。
実務上の射程
本判決は、爆発物取締罰則の合憲性を再確認したものである。答案上では、①罪刑法定主義(明確性の原則)の判断基準、②思想・良心の自由と外部的行動に対する制限の区別、③法定刑の合理性、といった論点において、本罰則の有効性を基礎付ける先例として引用できる。
事件番号: 昭和46(あ)2179 / 裁判年月日: 昭和47年3月9日 / 結論: 棄却
一 爆発物取締罰則一条にいう「治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的」のうち「治安ヲ妨ケ」るとは、公共の安全と秩序を害することをいう。 二 爆発物取締罰則は、現行憲法のもとにおいても、法律としての効力を有する(昭和二三年(れ)第一一四〇号同二四年四月六日大法廷判決・刑集三巻四号四五六頁、昭和三二年(あ)第三〇九…
事件番号: 平成8(あ)830 / 裁判年月日: 平成9年8月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則は現在も法律としての効力を有し、「治安ヲ妨ケ」るという構成要件も明確性の原則に反せず、かつ定められた刑罰が残虐な刑罰に当たったり思想差別を目的としたりするものではない。 第1 事案の概要:被告人らは、爆発物取締罰則違反等の罪で起訴された。これに対し、被告人側は、同罰則が明治17年太政…