爆発物取締罰則に関する違憲主張が排斥された事例
憲法14条,憲法19条,憲法31条,憲法59条,憲法73条,憲法98条
判旨
爆発物取締罰則は憲法施行後も法律としての効力を有し、その第1条にいう「治安ヲ妨ケ」るという概念は憲法31条が要求する刑罰法規の明確性の原則に違反しない。
問題の所在(論点)
明治期の太政官布告である爆発物取締罰則が現行憲法下で効力を有するか。また、同罰則1条の「治安ヲ妨ケ」という要件は、憲法31条の法理である「刑罰法規の明確性」に反し違憲ではないか。
規範
刑罰法規が憲法31条に適合するためには、通常の判断能力を有する者の理解において、何が禁止されているのかが読み取れる程度に明確でなければならない。しかし、法文に抽象的表現が含まれていても、客観的な読み取りが可能であり、処罰範囲が不明確でなければ、直ちに違憲とはならない。
重要事実
被告人は、爆発物取締罰則違反等の罪で起訴された。これに対し被告人側は、同罰則が明治時代の太政官布告であり、適正な立法手続を経ていないこと、および第1条の構成要件である「治安ヲ妨ケ」るという文言が極めて抽象的で不明確であり、憲法31条(罪刑法定主義・適正手続)等に違反して無効であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、爆発物取締罰則が現行憲法施行後も法律としての効力を保有していることは、既に確立された判例であることを再確認した。また、同条は所定の目的で爆発物を使用した者を処罰するものであり、思想・信条を問うものではない。さらに、同条にいう「治安ヲ妨ケ」るという概念は、爆発物の危険性や公共の安全という文脈から理解可能であり、不明確なものとはいえないと判示し、憲法違反の主張を退けた。
結論
爆発物取締罰則は現行憲法下でも効力を有し、その構成要件も明確性の原則に反しないため、同罰則を適用して被告人を処罰することは合憲である。
実務上の射程
太政官布告等の古い法規範の有効性や、抽象的な構成要件の明確性が争われる事案における論拠として利用できる。特に「治安ヲ妨ケ」のような一見して抽象的な概念であっても、判例上は明確性の原則に反しないとされる一例として、公序良俗や公共の福祉等の文言の解釈においても参照しうる。
事件番号: 昭和55(あ)1353 / 裁判年月日: 昭和56年1月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則は現行憲法施行後も法律としての効力を有し、同法1条にいう「治安ヲ妨ケ」るという概念は明確性の原則に反せず、かつ同条の法定刑も残虐な刑罰にあたらない。 第1 事案の概要:被告人は爆発物取締罰則違反等の罪で起訴された。これに対し被告人側は、同罰則が明治時代に制定された太政官布告等に由来す…
事件番号: 平成1(あ)1070 / 裁判年月日: 平成2年5月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則にいう「治安ヲ妨ケ」るという概念は憲法31条に違反するほど不明確ではなく、また同罰則は思想や信条を処罰の対象とするものではないため憲法19条、21条、14条等にも反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、爆発物取締罰則違反の罪に問われ、同罰則の合憲性を争って上告した。主な主張は、同罰…
事件番号: 昭和53(あ)800 / 裁判年月日: 昭和53年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則は憲法施行後も法律としての効力を有し、その1条が定める構成要件は明確であり、法定刑の重さも立法政策の範囲内で憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人両名は、爆発物取締罰則違反等の罪で起訴された。弁護人は、同罰則が明治17年の太政官布告であり憲法上の「法律」にあたらないこと、1条の…