憲法三一条違反をいう単なる法令違反の主張に対して応答した事例
憲法31条
判旨
被告人の捜査官に対する自白が任意になされたものと認められる場合には、憲法38条2項の自白排除法則には抵触せず、証拠能力が認められる。
問題の所在(論点)
捜査官に対する被告人の自白が、憲法38条2項(強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白)に違反し、証拠能力を否定されるべきか。自白の任意性の有無が問題となる。
規範
憲法38条2項及び刑訴法319条1項に基づく自白排除法則の適用に際しては、当該自白が「任意にされたものでない疑」があるか否かが判断基準となる。具体的には、虚偽排除の観点及び人権保障の観点から、外部的・状況的事実を総合考慮し、被告人の自由な意思決定に基づいた供述であると認められるかによって判断すべきである。
重要事実
被告人は捜査官に対して自白を行ったが、その後の公判過程において、当該自白は不当な強制等によりなされたものであり、憲法38条2項に違反するとしてその証拠能力を争い、上告を申し立てた。なお、被告人の司法警察員に対する各供述調書は、第一審の公判期日において適式な証拠調べ手続を経ている。
あてはめ
記録に照らせば、被告人の捜査官に対する自白は、虚偽を誘発するような不当な圧迫や自由な意思を制圧するような状況下でなされたものではなく、任意になされたものと認められる。したがって、憲法38条2項が禁止する「強制、拷問若しくは脅迫による自白」等には該当せず、その成立過程に違法な点は存在しないと解される。
結論
被告人の自白には任意性が認められるため、証拠能力を肯定した原判断に憲法違反はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
自白の任意性については、供述に至る経緯や取調べの状況等の具体的事実に基づき、裁判所が実質的に判断する。答案上は、本判決を前提に、取調べの時間の長さ、強制的態様の有無、黙秘権告知の有無等の事実を具体的に摘示し、それらが「自由な意思決定」を阻害したか否かという形で論じる際の基礎となる。
事件番号: 昭和28(あ)5514 / 裁判年月日: 昭和29年5月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条2項に基づき自白の任意性を争う場合であっても、強制によるものと認めるべき証跡がない限り、当該自白の証拠能力を否定することはできない。 第1 事案の概要:被告人が自白の任意性を争い、憲法38条2項違反および刑事訴訟法違反を主張して上告した事案。弁護人は、被告人の供述や自白が強制によるもので…