迅速裁判保障条項違反の異常事態が生じていないとされた事例
憲法37条1項
判旨
裁判の遅延が憲法37条1項に違反するか否かは、具体的な諸般の事情を総合して判断すべきであり、本件の経過時間は異常な事態とまでは認められない。
問題の所在(論点)
控訴審の審理開始までに約3年9か月を要し、判決までに長期の時間を費やしたことが、憲法37条1項の「迅速な裁判」を保障する規定に反し、被告人の権利を侵害するか。
規範
憲法37条1項が保障する「迅速な裁判」を受ける権利の侵害の有無は、訴訟の具体的な進行状況、遅延の期間、原因、被告人の不利益等の諸般の事情を総合的に考量し、その遅延が「異常な事態」にまで立ち至っているか否かによって判断される。
重要事実
被告人が控訴を申し立て、弁護人が控訴趣意書を提出してから、原審(控訴審)の第1回公判期日に至るまでに、約3年9か月の期間が経過していた。また、控訴申立てから原判決が言い渡されるまでの全体期間についても、相応の年月を要していた。
あてはめ
本件では、控訴趣意書提出から第1回公判期日まで約3年9か月を要しており、裁判手続に相当の時間を費やしている事実は認められる。しかし、記録上うかがわれる諸般の事情を総合的に検討すれば、この遅延が直ちに憲法上の保障に反するような「異常な事態」に該当するとまでは断定できない。
結論
本件の審理の遅延は、憲法37条1項に定める迅速な裁判の保障に反する異常な事態とはいえず、憲法違反には当たらない。
実務上の射程
「高田事件」大法廷判決(最判昭47.12.20)の枠組みを再確認した事例。司法試験においては、裁判の遅延が問題となる場合に「諸般の事情の総合考慮」と「異常な事態」というキーワードを用いて論じる際の基礎となる。ただし、具体的な考慮要素(原因や被告人の態様)については、先行する大法廷判決を併せて参照すべきである。
事件番号: 昭和50(あ)443 / 裁判年月日: 昭和51年2月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「迅速な裁判」の権利侵害の有無は、訴訟手続の遅延の期間のみならず、記録上うかがわれる諸般の事情を総合して判断すべきであり、異常な遅延が生じていない限り違憲とはならない。 第1 事案の概要:本件は被告人A外3名による労働争議等に関連した事件と解されるが(憲法28条への言及から…