第一審および原審の裁判が迅速を欠いたということはできないとして前提を欠くとされた事例
憲法37条,憲法98条
判旨
被告人の迅速な裁判を受ける権利が侵害されたか否かは、訴訟の経過に徴して個別に判断されるべきであり、本件においては第一審および原審の審判が迅速を欠いたとは認められない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟において第一審および原審の審理に要した時間が、憲法37条1項にいう「迅速な裁判」を保障する規定に違反し、被告人の権利を侵害するものといえるか。
規範
憲法37条1項が保障する「迅速な裁判を受ける権利」の侵害の有無は、訴訟全体の経過を具体的に検討し、審判が不当に遅延したといえるか否かによって判断される。具体的には、審理期間の長さ、遅延の理由、被告人の不利益等を総合考慮すべきである(高田事件判決の枠組み参照)。
重要事実
被告人は刑事事件の第一審および原審における審判の遅延を理由として、憲法37条および98条違反を主張し上告した。具体的な訴訟期間や個別の遅延事情については、判決文からは不明であるが、記録上認められる訴訟の経過が争点となった事案である。
あてはめ
本件第一審および原審の訴訟経過を記録に照らして検討すると、その審判が不当に迅速を欠いた事実は認められない。したがって、審理期間が憲法で許容される範囲を超えて長期化したとはいえず、被告人の迅速な裁判を受ける権利を侵害する実態はないと解される。
事件番号: 昭和50(あ)443 / 裁判年月日: 昭和51年2月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「迅速な裁判」の権利侵害の有無は、訴訟手続の遅延の期間のみならず、記録上うかがわれる諸般の事情を総合して判断すべきであり、異常な遅延が生じていない限り違憲とはならない。 第1 事案の概要:本件は被告人A外3名による労働争議等に関連した事件と解されるが(憲法28条への言及から…
結論
本件第一審および原審の審判は迅速を欠いたということはできないため、憲法37条1項違反には当たらず、上告は棄却される。
実務上の射程
憲法37条1項の迅速な裁判に関する一般的なあてはめの例を示すものである。実務上は、高田事件判決(最判昭47.12.20)が示した「具体的期間、遅延の理由、被告人の不利益」という3要素に本判決のような具体的認定を組み合わせて論じる際の補強として活用できる。
事件番号: 昭和52(あ)1716 / 裁判年月日: 昭和53年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判の遅延が憲法37条1項に違反するか否かは、具体的な諸般の事情を総合して判断すべきであり、本件の経過時間は異常な事態とまでは認められない。 第1 事案の概要:被告人が控訴を申し立て、弁護人が控訴趣意書を提出してから、原審(控訴審)の第1回公判期日に至るまでに、約3年9か月の期間が経過していた。ま…
事件番号: 昭和57(あ)752 / 裁判年月日: 昭和58年5月27日 / 結論: 棄却
殺人の実行行為者が被告人であるのか、現場に同道していた甲であるのか等が争われた事案につき、第一審において約八年を費して詳細な事実審理を行つており、原審においても約二年を費して検察官申請の証人のすべてを取り調べる等していて、これを第一審に差し戻しても、実質的に意味のある新証拠の提出される蓋然性が必ずしも大きくないときは、…