地方裁判所がした勾留取消請求却下決定に対する特別抗告の適否
刑訴法433条1項
判旨
勾留取消請求を却下した地方裁判所の決定に対し、直接最高裁判所へ特別抗告を申し立てることは、刑事訴訟法433条1項の要件を欠き不適法である。
問題の所在(論点)
地方裁判所が行った勾留取消請求却下決定に対し、高等裁判所への抗告を経ずに最高裁判所へ直接特別抗告を申し立てることができるか。刑事訴訟法433条1項の「不服を申し立てることができない決定」の解釈が問題となる。
規範
刑事訴訟法433条1項に基づく特別抗告は、不服を申し立てることができない決定または命令に対してのみ認められる。地方裁判所がした決定に対し、同法419条および420条2項により高等裁判所への抗告(通常抗告)が認められる場合には、直接最高裁判所へ特別抗告を申し立てることはできない。
重要事実
被告人は兇器準備集合および傷害の罪で起訴されていた。昭和51年10月25日、静岡地方裁判所沼津支部は、被告人に対する勾留取消請求を却下する決定を下した。これに対し、申立人は高等裁判所への抗告を経ることなく、直接最高裁判所に対して特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件における静岡地方裁判所沼津支部の決定は、勾留取消請求を却下するものである。刑事訴訟法420条2項は、勾留に関する裁判について抗告を許容しており、同法419条によりその抗告先は管轄高等裁判所となる。したがって、本件決定は「不服を申し立てることができない決定」には該当せず、通常抗告の対象であるといえる。これに対し、いきなり最高裁判所へ申し立てられた本件特別抗告は、不服申立経路の順序を誤った不適法なものであると判断される。
事件番号: 昭和46(し)61 / 裁判年月日: 昭和46年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所による証拠調請求却下決定や、裁判長による被告人への質問処分などは、刑訴法433条1項に規定される「この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令」には該当せず、特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:傷害被告事件の控訴審において、東京高等裁判所が申立人の証拠調請求を却下する…
結論
本件特別抗告は刑事訴訟法433条1項の要件を備えないため、同法434条・426条により棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟手続における不服申立の適法性を判断する際の基本的事例である。地方裁判所の裁判(特に勾留等の身分に関わる決定)に対しては、まず高等裁判所への抗告の可否を検討すべきであり、中間手続を飛ばした特別抗告が許されないことを示している。実務上は、抗告の管轄を誤らないための注意喚起として機能する。
事件番号: 昭和51(し)22 / 裁判年月日: 昭和51年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟手続に関し判決前にした決定に対する異議申立てを棄却する旨の決定は、刑事訴訟法433条にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には当たらない。したがって、かかる決定に対して同条に基づく特別抗告を申し立てることは不適法である。 第1 事案の概要:弁護人は、公判期日において、検察官…
事件番号: 昭和29(し)49 / 裁判年月日: 昭和29年9月18日 / 結論: 棄却
刑訴第四二九条による請求(いわゆる準抗告)についてした決定に対しては、高裁に抗告をすることはできない。
事件番号: 昭和54(し)132 / 裁判年月日: 昭和54年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判期日変更請求却下決定のように、訴訟手続に関し判決前にされた決定は、刑事訴訟法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には該当せず、特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:本件の抗告人は、裁判所に対して公判期日の変更を請求したが、裁判所はこれを却下する決定(…
事件番号: 昭和53(し)17 / 裁判年月日: 昭和53年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留に関する抗告事件に関与した裁判官が、同一被告人の控訴審における審理を担当することは、憲法37条1項の定める「公平な裁判所」の要請に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の勾留に関する不服申立て(抗告事件)に関与した裁判官が、後にその被告人の本案事件の控訴審において審理を担当した。弁護側は、この…