裁判長の被告人質問等を不服とする特別抗告
判旨
裁判所による証拠調請求却下決定や、裁判長による被告人への質問処分などは、刑訴法433条1項に規定される「この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令」には該当せず、特別抗告の対象とはならない。
問題の所在(論点)
裁判所がした証拠調請求却下決定および裁判長による被告人への質問処分が、刑訴法433条にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令」に該当し、特別抗告の対象となるか。
規範
刑訴法433条1項に基づく特別抗告の対象は、同法により不服を申し立てることができない「決定又は命令」に限定される。訴訟手続上の個別的な処分や、証拠の採否に関する決定、あるいは調書の記載の正確性や供述の任意性といった事由は、同条が予定する抗告理由には当たらない。
重要事実
傷害被告事件の控訴審において、東京高等裁判所が申立人の証拠調請求を却下する決定を行い、あわせて裁判長が申立人に対して質問を行う処分をした。これに対し、申立人は当該決定および処分に不服があるほか、一審公判調書の不正確性や自白の任意性の欠如を主張して特別抗告を申し立てた。
あてはめ
申立人が主張する内容は、(1)証拠調請求却下決定、(2)裁判長の質問処分、(3)公判調書の不正確性、(4)供述の任意性欠如の4点である。しかし、これらはいずれも刑事訴訟法上、独立して特別抗告を申し立てることが認められた「決定又は命令」には該当しない。したがって、法433条の適格性を欠く不適法な申し立てと判断される。
結論
本件各決定および処分は刑訴法433条の対象に含まれないため、本件抗告は棄却される。
事件番号: 昭和30(し)45 / 裁判年月日: 昭和30年10月29日 / 結論: 棄却
本件証拠請求却下の決定のように訴訟手続に関し判決前にした決定は、刑訴四三三条一項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」に当らない(昭和二九年(し)第三七号、同年一〇月八日第三小法廷決定、集第八巻一〇号一五八八頁)。
実務上の射程
特別抗告の対象がいかに限定的であるかを示す事例である。実務上、証拠採否などの訴訟指揮に関する不服は、終局判決に対する上訴の中で主張すべき事柄であり、433条の「決定・命令」として独立して争うことはできない点に注意が必要である。
事件番号: 昭和51(し)22 / 裁判年月日: 昭和51年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟手続に関し判決前にした決定に対する異議申立てを棄却する旨の決定は、刑事訴訟法433条にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には当たらない。したがって、かかる決定に対して同条に基づく特別抗告を申し立てることは不適法である。 第1 事案の概要:弁護人は、公判期日において、検察官…
事件番号: 昭和47(し)87 / 裁判年月日: 昭和47年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟手続に関し判決前にした決定は、刑事訴訟法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には該当しない。したがって、証拠調請求却下決定に対する異議申立を棄却した決定に対して、同条に基づく特別抗告を申し立てることはできない。 第1 事案の概要:被告人側が証拠調べを請求したが…
事件番号: 昭和46(し)14 / 裁判年月日: 昭和46年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟手続に関し判決前にされた決定は、刑事訴訟法433条1項に規定する「この法律により不服を申し立てることができない決定」には該当せず、同条に基づく特別抗告の対象とならない。 第1 事案の概要:本件において、抗告人は証拠調決定に対する異議申立てを棄却する決定を受けた。これに対し、抗告人は憲法37条1…
事件番号: 昭和51(し)118 / 裁判年月日: 昭和51年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留取消請求を却下した地方裁判所の決定に対し、直接最高裁判所へ特別抗告を申し立てることは、刑事訴訟法433条1項の要件を欠き不適法である。 第1 事案の概要:被告人は兇器準備集合および傷害の罪で起訴されていた。昭和51年10月25日、静岡地方裁判所沼津支部は、被告人に対する勾留取消請求を却下する決…