交通反則金既納付を看過してされた略式命令に対する非常上告が認容された事例
刑訴法458条1号
判旨
交通反則告知を受け、納付期限内に反則金を納付した事実がある場合、当該事実については道路交通法128条2項により公訴を提起することができず、これに反した公訴提起に対しては刑訴法338条4号に基づき公訴棄却の判決をすべきである。
問題の所在(論点)
交通反則金の納付が完了している事実について公訴が提起された場合、裁判所はいかなる措置を講じるべきか。特に、確定した略式命令が存在する場合の対応が問題となる。
規範
道路交通法上の交通反則通告を受け、納付期限内に反則金を納付したときは、当該反則行為の事実について公訴を提起することができない(道路交通法128条2項)。この規定に違反してなされた公訴提起は、「公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき」に該当し、裁判所は刑訴法338条4号により公訴棄却の判決を言い渡すべきである。略式命令がなされ確定した後に当該事実が判明した場合には、非常上告の手続により当該略式命令を破棄し、公訴棄却の自判をすべきである。
重要事実
被告人は昭和47年4月9日、法定の最高速度を20キロメートル超える速度で普通乗用自動車を運転した。同日、被告人は当該事実につき交通反則通告書により反則金8,000円を納付すべき旨の告知を受け、納付期限内である同月13日に反則金を納付した。しかし、検察官は同年10月31日、同一の事実について道路交通法違反として公訴を提起した。簡易裁判所は同年11月14日に罰金8,000円の略式命令を発し、同年12月7日に確定した。
あてはめ
被告人は、公訴提起の前である昭和47年4月13日に、本件と同一の事実に基づく反則金を適法に納付している。そうすると、道路交通法128条2項の規定により、検察官は当該事実について公訴を提起することができない。それにもかかわらずなされた本件公訴提起は、公訴提起の手続が規定に違反し無効な場合に当たる。したがって、裁判所としては刑訴法463条1項により通常手続に移した上で、刑訴法338条4号に基づき公訴棄却の判決をすべきであったといえる。本件では既に略式命令が確定しているが、これは法令に違反し被告人に不利益な裁定であるため、非常上告により破棄されるべきである。
結論
原略式命令を破棄する。刑訴法338条4号により、本件公訴を棄却する。
実務上の射程
交通反則金制度(反則金納付による刑事追訴免除)の法的効果が公訴提起の有効性に直結することを示した事例である。司法試験においては、公訴提起の有効条件や公訴棄却事由(338条4号)の具体例として、あるいは非常上告の対象となる法令違反の事例として引用し得る。
事件番号: 昭和54(さ)4 / 裁判年月日: 昭和54年11月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】交通反則告知に基づく反則金の納付がなされた場合、同一の公訴事実について公訴を提起することはできず、これに反して発せられた略式命令は法令違反として公訴棄却の対象となる。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反(通行禁止違反)の事実に基づき、1978年9月11日に交通反則通告書により反則金5000円…
事件番号: 昭和60(さ)4 / 裁判年月日: 昭和61年5月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の「反則者」に該当する者に対し、交通反則告知・通告手続を経ることなく公訴を提起することは、公訴提起の手続が規定に違反し無効であるため、刑事訴訟法338条4号により公訴を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は指定最高速度を21キロメートル超過して運転し、道路交通法違反の事実で公訴…
事件番号: 平成1(さ)1 / 裁判年月日: 平成元年4月20日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法違反の事実に基づき反則金を通告期限内に納付した場合には、道交法128条2項により公訴を提起することができず、これに反してなされた公訴提起は刑訴法338条4号により棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は昭和63年1月14日、通行禁止道路を普通乗用自動車で通行した。同年2月24日…
事件番号: 昭和61(さ)2 / 裁判年月日: 昭和62年3月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法違反の事実について反則金を納付したときは、同法128条2項により公訴を提起することができない。それにもかかわらず公訴提起がなされ、有罪の略式命令が確定した場合は、法令違反かつ被告人に不利益であるため、非常上告により破棄・公訴棄却とされる。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反(整備不…