交通反則金既納付を看過してなされた略式命令に対する非常上告
刑訴法458条1号
判旨
交通反則告知に基づく反則金を納付した事実がある場合、同一の事実について公訴を提起することは道路交通法128条2項により許されない。これに反して発せられた略式命令は法令違反であり、裁判所は刑訴法338条4号に基づき公訴棄却の判決をすべきである。
問題の所在(論点)
反則金を納付済みの事実について公訴が提起され、これに基づき略式命令が発せられた場合、当該略式命令および公訴提起の効力はどうなるか。
規範
道路交通法上の交通反則通告制度において、反則者が通告に従い期間内に反則金を納付したときは、当該事案について公訴を提起することができず、家庭裁判所の審判に付することもできない(道路交通法128条2項)。この規定に違反してなされた公訴提起は、「公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき」に該当し、裁判所は刑訴法338条4号により公訴棄却の判決を言い渡すべきである。
重要事実
被告人は道路交通法違反(通行区分違反)の事実に関し、交通反則通告書により反則金6000円を納付すべき旨の通告を受け、納付期限内にこれを納付した。しかし、検察官は右納付済みの事実と同一の事実に基づき、簡易裁判所に対して公訴を提起した。簡易裁判所はこれに対し、罰金6000円の略式命令を発付し、同命令は確定した。その後、非常上告が申し立てられた。
あてはめ
本件被告人は、公訴提起に先立ち反則金を適法に納付している。そうすると、道路交通法128条2項により、当該公訴事実については公訴提起自体が法律上許されない。したがって、本件公訴提起は刑訴法338条4号にいう「公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき」に該当する。それにもかかわらず、有罪を認定して略式命令を発付した原判決は法令に違反し、かつ被告人に不利益であることが明らかである。
結論
原略式命令を破棄し、刑訴法338条4号に基づき本件公訴を棄却する。
実務上の射程
交通反則特例法における反則金納付の「二重処罰禁止(公訴提起権の消滅)」の効力を確認した判例である。実務上は、形式的訴訟条件の欠如(刑訴法338条各号)を検討する際の典型例として、また非常上告の手続における判決の破棄・公訴棄却の具体例として活用される。
事件番号: 昭和51(さ)1 / 裁判年月日: 昭和51年6月29日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】交通反則告知を受け、納付期限内に反則金を納付した事実がある場合、当該事実については道路交通法128条2項により公訴を提起することができず、これに反した公訴提起に対しては刑訴法338条4号に基づき公訴棄却の判決をすべきである。 第1 事案の概要:被告人は昭和47年4月9日、法定の最高速度を20キロメ…
事件番号: 昭和60(さ)3 / 裁判年月日: 昭和60年10月28日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法違反の事実に基づき反則金を納付した者に対し、同一の事実について公訴が提起された場合、道交法128条2項により公訴提起は許されず、刑訴法338条4号により公訴棄却の判決をすべきである。 第1 事案の概要:被告人は、原動機付自転車の運転免許不携帯の事実に関し、昭和59年5月8日に交通反則通告…
事件番号: 昭和61(さ)2 / 裁判年月日: 昭和62年3月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法違反の事実について反則金を納付したときは、同法128条2項により公訴を提起することができない。それにもかかわらず公訴提起がなされ、有罪の略式命令が確定した場合は、法令違反かつ被告人に不利益であるため、非常上告により破棄・公訴棄却とされる。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反(整備不…
事件番号: 平成14(さ)3 / 裁判年月日: 平成15年4月15日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】交通反則通告制度に基づき反則金を納付した者に対しては、当該納付の対象となった行為について公訴を提起することができず、これに反した公訴提起は刑事訴訟法338条4号により棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反(駐車禁止場所での駐車)の事実について、少年時に家庭裁判所へ送致され…