所論引用の判例が所論のような判示をしているものではないとして判例違反の主張を斥けた事例
判旨
銃砲刀剣類所持等取締法上の「銃砲」とは、現に発射機能を有しないものであっても、通常の補修を施すことにより容易に発射機能を有するに至るものを含む。また、その回復可能性は銃砲の知識を欠く通常人を基準に判断されるべきものではない。
問題の所在(論点)
銃砲刀剣類所持等取締法上の「銃砲」の意義、とりわけ現に発射機能を有しない物が「銃砲」に含まれるための要件(回復可能性の程度)およびその判断基準が問題となる。
規範
「銃砲」とは、その物の構造自体からみて人命に危険を及ぼす程度の殺傷能力を有するものを指すが、現に発射機能を有しない状態にあっても、通常の補修を施すことにより容易にその機能を回復し、発射可能な状態に至るものを含むと解すべきである。その際の回復可能性の判断は、銃砲に関する知識を全く欠く通常人を基準とする必要はない。
重要事実
被告人が銃砲(拳銃等)を所持していたとして、銃砲刀剣類所持等取締法違反で起訴された事案。当該物件は、所持の時点において現に発射機能を有していなかったが、通常の補修を施せば容易に発射機能を有するに至る状態であった。弁護人は、他人に保管を託して間接的に支配している場合には、容易に発射機能を回復できるものであっても「銃砲」に当たらない、また、回復可能性は銃砲の知識を欠く通常人を基準に判断すべきであると主張して上告した。
あてはめ
本件物件は、現に発射機能を有しないものの、通常の補修を施すことで容易にその機能を回復できる状態にある。このような物件は、人命に対する危険性が潜在的に保持されており、同法の規制対象たる「銃砲」に当たると評価される。また、弁護人が主張する「通常人が修理できる場合に限る」との基準は、同法の目的である犯罪防止や公共の安全維持の観点から見て失当であり、専門的知識や一定の技術を要する場合であっても、客観的に容易に修復可能であれば「銃砲」性を肯定できるといえる。
事件番号: 昭和48(あ)1121 / 裁判年月日: 昭和49年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲刀剣類所持等取締法における「けん銃」に該当するためには、犯行当時において、当該けん銃が正常な実包発射の機能を有していることを要する。 第1 事案の概要:被告人が所持していた各けん銃について、銃刀法違反の罪が問われた。弁護人は、当該けん銃が殺傷能力を欠くものであるとして、法令の解釈誤りや憲法違反…
結論
現に発射機能を有しなくても、通常の補修により容易に機能を回復できるものは「銃砲」に該当する。本件上告は棄却される。
実務上の射程
銃砲の定義に関するリーディングケースである。答案上は、物件が一部損壊している場合や部品が欠落している場合でも、客観的な「修復の容易性」があれば「銃砲」に該当すると論じる際の根拠となる。判断基準として「通常人の修理可能性」に限定されない点も、実務上重要である。
事件番号: 昭和57(あ)1721 / 裁判年月日: 昭和58年2月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が暴力団構成員であることをもって直ちに量刑上不利益な差別的処遇をすることは許されないが、当該属性を考慮したとしても直ちに憲法14条に反する不当な差別には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が暴力団の構成員であるという事実が量刑において考慮された。これに対し、弁護人は「被告人が暴力団構成員で…
事件番号: 昭和55(あ)1547 / 裁判年月日: 昭和55年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】私製けん銃が「けん銃」に該当するか否かは、金属性弾丸の発射機能を有しているかという実質的な性能に基づいて判断される。 第1 事案の概要:被告人が所持していた物件が私製けん銃であったところ、弁護人は当該物件に金属性弾丸の発射機能がないと主張して、原審が認定した「けん銃」該当性を争った。 第2 問題の…
事件番号: 昭和52(あ)1069 / 裁判年月日: 昭和52年11月29日 / 結論: 棄却
一 銃砲刀剣類所持等取締法及び火薬類取締法にいう所持とは、所定の物の保管について実力支配関係をもつことをいい、たといそれが数分間にとどまる場合であつても、所持にあたる。 二 拳銃及び実包の買入れ方を依頼され、室内で自分が買主であるかのように振舞つてこれを買い入れた上、売主が帰つた後、廊下に出て依頼者に手渡した場合には、…
事件番号: 昭和41(あ)2952 / 裁判年月日: 昭和42年4月13日 / 結論: 棄却
装飾用に製作された現に刃がついていない儀礼刀でも、その刀身が、刃をつけるに足りる一三クロームステンレス鋼で作られており、平やすり、電動式グラインダー等による加工研摩によつて、容易に鋭利な刃をつけることができるもの(原判文参照)は、銃砲刀剣類等所持取締法第三条第一項、第二条第二項にいう刀剣類にあたる。