一 銃砲刀剣類所持等取締法及び火薬類取締法にいう所持とは、所定の物の保管について実力支配関係をもつことをいい、たといそれが数分間にとどまる場合であつても、所持にあたる。 二 拳銃及び実包の買入れ方を依頼され、室内で自分が買主であるかのように振舞つてこれを買い入れた上、売主が帰つた後、廊下に出て依頼者に手渡した場合には、拳銃等を受け取つてから依頼者にこれを手渡すまでの間の現実の保管行為は、所持にあたり、売買の際に依頼者が同席しており、かつ、保管が数分間であつたことは、所持を認める上で障害となるものではない。
一 銃砲刀剣類所持等取締法及び火薬類取締法にいう所持の意義 二 拳銃及び実包の所持にあたるとされた事例
銃砲刀剣類所持等取締法3条1項,銃砲刀剣類所持等取締法31条の2第1号,火薬類取締法21条,火薬類取締法59条2号
判旨
銃砲刀剣類所持等取締法及び火薬類取締法にいう「所持」とは、対象物の保管について実力支配関係を持つことをいい、たとえそれが数分間にとどまる場合であっても、排他的な実力支配が認められる限り「所持」に当たる。
問題の所在(論点)
銃砲刀剣類所持等取締法及び火薬類取締法における「所持」の意義、とりわけ数分間という極めて短時間の保持が「所持」に該当するか。
規範
「所持」とは、物の保管について実力支配関係を持つことをいう。この実力支配関係は、時間的な継続性を要件とするものではなく、たとえ数分間という短時間の保持であっても、その間に排他的な支配が認められるのであれば、当該要件を充足すると解するのが相当である。
重要事実
被告人は、拳銃及び実包の買入れを依頼され、依頼者が同席する部屋で買主を装ってこれらを買い入れた。売主の退出後、廊下に出て依頼者に手渡すまでの数分間、被告人は当該拳銃等を現実に握持していた。この間、依頼者は同席していたものの、被告人が現実にこれらを保管していた事案である。
事件番号: 昭和28(あ)708 / 裁判年月日: 昭和28年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲刀剣類所持等取締法(本判決当時は旧銃砲火薬類取締法等)における「所持」とは、物を自己の支配し得べき状態に置くことをいい、他人から預かって持ち運ぶ行為もこれに含まれる。 第1 事案の概要:被告人は、拳銃1挺および拳銃実包4発を他人から預かり、これを持ち運んだ。弁護人は、このような一時的な預かりや…
あてはめ
被告人が売主から拳銃等を受け取り、依頼者に手渡すまでの間、売主は既に立ち去り、依頼者は被告人から交付を受ける前の状態であった。したがって、その間は売主・依頼者のいずれにも排他的な実力支配関係はなく、現実に保管していた被告人にのみ実力支配関係があったといえる。数分間という短時間であっても、その間に第三者の干渉を排して物を支配している以上、実力支配関係を否定する障害にはならない。
結論
被告人の行為は、銃砲刀剣類所持等取締法及び火薬類取締法上の「所持」に該当する。
実務上の射程
短時間の所持(いわゆる『一過性の所持』)の可罰性を肯定した重要判例である。答案上は、所持の定義として『実力支配関係』を提示した上で、時間的長さは所持の成否自体には影響せず、場所的・時間的状況から『排他的支配』が認められるかを論じる際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和24(れ)1502 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令違反罪は、銃砲等を所持するを以て直に成立するものであるから、本件拳銃の所持携帯が、假りに數時間に過ぎなかつたとしても、犯罪の成立を妨げる理由とはならない。
事件番号: 昭和51(あ)907 / 裁判年月日: 昭和51年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲刀剣類所持等取締法上の「銃砲」とは、現に発射機能を有しないものであっても、通常の補修を施すことにより容易に発射機能を有するに至るものを含む。また、その回復可能性は銃砲の知識を欠く通常人を基準に判断されるべきものではない。 第1 事案の概要:被告人が銃砲(拳銃等)を所持していたとして、銃砲刀剣類…
事件番号: 昭和24(れ)1977 / 裁判年月日: 昭和24年11月1日 / 結論: 棄却
一 論旨第一點は、検事は、被告人Aが拳銃一挺を所持した事實につき公訴を提起したのであるのに、原判決が彈倉およびサツクについて有罪を認定したのは、公訴のない事實について、裁判したものであると非難する。しかし彈倉とサツクとは拳銃の附屬品であるから、拳銃所持についての起訴は附屬品所持を含み、原判決がその全部の所持につき斷罪し…
事件番号: 昭和42(あ)2479 / 裁判年月日: 昭和43年11月7日 / 結論: 棄却
累犯関係の有無は、前刑の執行を終りまたは執行の免除があつた日から五年の期間内に、犯罪の実行行為をしたか否かを基準にして決すべきものであつて、五年の期間内に、犯罪行為の着手があつたか否かのみを基準にして決すべきものではない。