累犯関係の有無は、前刑の執行を終りまたは執行の免除があつた日から五年の期間内に、犯罪の実行行為をしたか否かを基準にして決すべきものであつて、五年の期間内に、犯罪行為の着手があつたか否かのみを基準にして決すべきものではない。
累犯関係の有無の決定基準
刑法56条1項
判旨
継続犯の不法所持罪において、最初の着手時が前刑の執行終了前であっても、執行終了後の5年以内に所持行為が継続されている以上、刑法56条1項の累犯の要件を満たす。
問題の所在(論点)
継続犯である不法所持罪において、犯罪の着手が前刑の執行終了前であっても、執行終了後に所持行為が継続している場合、刑法56条1項の累犯(再犯)が成立するか。
規範
刑法56条1項にいう「罪ヲ犯シ」とは、犯罪の実行行為をすることを意味する。したがって、累犯関係の有無は、前刑の執行終了等から5年以内に「犯罪の実行行為」をしたか否かを基準とすべきであり、必ずしも実行の着手が5年以内になされる必要はない。継続犯においては、5年の期間内に実行行為が継続されていれば、同条の要件を満たすものと解する。
重要事実
被告人は、昭和41年9月13日に前刑(懲役刑)の執行を受け終わった。他方、被告人は昭和40年6月下旬頃から昭和41年10月17日までの間、拳銃等を不法に所持していた。原審は、不法所持罪の着手時期が前刑の執行終了前である(昭和40年6月)ことを理由に、累犯の成立を否定したため、上告審で累犯の成否が争点となった。
事件番号: 昭和50(あ)1702 / 裁判年月日: 昭和50年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が以前に有罪判決を受けた拳銃所持の事実と、本件で起訴された拳銃所持の事実は、別個の拳銃に係るものである限り「同一の事実」とは認められず、一事不再理の効力は及ばない。 第1 事案の概要:被告人は以前、回転式改造拳銃1丁等の所持により松山地方裁判所で有罪判決を受けていた。その後、被告人は別の改造…
あてはめ
本件における拳銃等の不法所持は、昭和40年6月から昭和41年10月まで継続しており、前刑の執行が終了した昭和41年9月13日以降も約1ヶ月間にわたって継続されている。刑法56条1項の基準は「実行行為」の有無であるから、執行終了後に不法所持という実行行為が継続している以上、同期間内に「罪ヲ犯シ」たものと評価できる。着手が5年以内であることを要するとした過去の判例の趣旨は、5年以内に着手があれば終了が5年経過後でも累犯となるという意味であり、着手が5年以内でなければならないことを意味しない。
結論
被告人は前刑の執行終了後も引き続き拳銃等を不法に所持しており、累犯関係(刑法56条1項)が成立する。したがって、累犯を否定した原判決の判断には法令解釈の誤りがある(ただし本件は被告人のみの上告であるため破棄はしない)。
実務上の射程
継続犯における累犯の起算点と範囲を明確にした判例である。答案上は、累犯の要件検討において「罪を犯した」時期を評価する際、継続犯であれば一部でも5年以内の期間にかかれば足りるという規範として活用する。
事件番号: 昭和52(あ)1069 / 裁判年月日: 昭和52年11月29日 / 結論: 棄却
一 銃砲刀剣類所持等取締法及び火薬類取締法にいう所持とは、所定の物の保管について実力支配関係をもつことをいい、たといそれが数分間にとどまる場合であつても、所持にあたる。 二 拳銃及び実包の買入れ方を依頼され、室内で自分が買主であるかのように振舞つてこれを買い入れた上、売主が帰つた後、廊下に出て依頼者に手渡した場合には、…
事件番号: 昭和26(あ)4536 / 裁判年月日: 昭和27年9月25日 / 結論: 棄却
所持罪のような継続犯については、一個の罪が成立しその継続中、たといその刑罰法規に変更があつても、刑法六条による新旧両法対照の問題はおこらず、常に新法を適用処断するを相当とする。
事件番号: 昭和42(あ)130 / 裁判年月日: 昭和42年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲刀剣類等所持取締法違反と火薬類取締法違反が観念的競合(刑法54条1項前段)の関係にある場合、その旨の適用を欠いても、結果として重い方の罪の刑で処断していれば、判決に影響を及ぼす違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、銃砲刀剣類等所持取締法違反および火薬類取締法違反の罪に問われた。第一審…
事件番号: 昭和31(あ)2018 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
刀剣不法所持の犯罪は、いわゆる継続犯として一罪であり不法所持の継続の終了の時を犯罪終了時と解すべきであるから、不法所持の継続中に他の罪につき確定裁判があつても、その罪と刑法第四五条後段の併合罪となるものではない。