所持罪のような継続犯については、一個の罪が成立しその継続中、たといその刑罰法規に変更があつても、刑法六条による新旧両法対照の問題はおこらず、常に新法を適用処断するを相当とする。
刑罰法規に変更があつた場合継続犯についてはいずれの法律を適用すべきか
銃砲刀剣類等所持取締令2条,銃砲等所持禁止令2条
判旨
所持罪のような継続犯の実行行為中に刑罰法規の変更があった場合、刑法6条による新旧両法の比較は行わず、常に実行終了時の法である新法を適用すべきである。
問題の所在(論点)
所持罪のような継続犯の実行行為が継続している間に刑罰法規が変更された場合、刑法6条の「犯罪後の法律によつて刑の変更があつたとき」に該当し、新旧両法の刑を比較して軽い方を適用すべきか、それとも常に新法を適用すべきか。
規範
継続犯については、一個の罪が成立し継続している間、たとえその刑罰法規に変更があったとしても、刑法6条(刑の軽重の比較)の問題は生じない。実行行為の終了時を基準とするため、常に実行終了時に施行されている法(新法)を適用して処断するのが相当である。
重要事実
被告人が特定の物を所持し続けていたところ、その所持(継続犯)の継続中に、当該行為を罰する刑罰法規の変更(改正)が行われた。弁護人は、第一審の事実認定の非難や法令違反を理由に上告を申し立てたが、原審で主張されていない事項や単なる法令違反は上告理由に当たらないとされた。もっとも、裁判所は職権で、法変更があった場合の適用法の適否について検討を行った。
あてはめ
本件のような所持罪は、所持という状態の継続により実行行為が続く継続犯である。刑法6条が規定する「犯罪後」とは、実行行為が終了した後のことを指すと解される。継続犯においては、法変更の時点では依然として実行行為が継続中であり、いまだ「犯罪後」には至っていない。したがって、実行行為の一部が新法の施行後に行われている以上、その行為全体に対して、行為時に有効である新法を適用することに何ら不都合はない。よって、新旧両法の対照を要さず、新法によって処断されるべきである。
結論
継続犯の継続中に刑罰法規が変更された場合は、刑法6条の適用はなく、常に新法を適用する。
実務上の射程
継続犯(所持罪、監禁罪等)において、法改正により厳罰化された場合の適用法を判断する際の基礎となる判例である。行為の一部が新法施行後にかかっていれば、行為全体を新法で裁くことができ、憲法39条の不遡及の原則にも反しないとされる。
事件番号: 昭和25(あ)2696 / 裁判年月日: 昭和27年11月28日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和26(れ)2420 / 裁判年月日: 昭和27年5月6日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和26(れ)2350 / 裁判年月日: 昭和27年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧銃砲等所持禁止令が憲法に違反しないことは判例の確立したところであり、また昭和22年法律第72号1条の2の規定に照らし、同令が昭和22年12月31日をもって当然に失効することはない。 第1 事案の概要:被告人は銃砲等の所持禁止に抵触する行為を行い、旧銃砲等所持禁止令(および銃砲刀剣類等所持取締令附…