死刑事件
判旨
死刑制度は憲法36条の「残虐な刑罰」に当たらず、犯行の罪質、動機、態様、社会的影響の重大性等の諸事情に照らし、被告人に有利な事情を考慮しても死刑の選択がやむを得ないと認められる場合には、死刑の科刑は正当として是認される。
問題の所在(論点)
死刑制度の合憲性、および身代金目的誘拐殺人等の重大な犯罪において、犯行の残虐性や社会的影響等の諸事情を考慮した結果として死刑を選択することが量刑不当(刑訴法411条適用事由)に当たるか。
規範
死刑が憲法36条の「残虐な刑罰」に当たらないことは確立した判例である。量刑の妥当性については、①犯行の罪質、②動機、③態様、④結果、⑤社会的影響の重大性といった犯情の悪質性に加え、⑥被告人の年齢、⑦性格、⑧境遇等の諸事情を総合的に参酌し、死刑の選択が「やむを得ない」か否かによって判断すべきである。
重要事実
被告人は、登校中の児童を略取して殺害し、さらにその親族に対して多額の身代金を要求するという身代金目的誘拐殺人等の犯行に及んだ。また、現住建造物放火についても未必の殺意が認められた。弁護側は、犯行の二日前から生じた潜在的な殺意や、犯行時の責任能力の有無、および死刑の違憲性を主張して上告した。
あてはめ
本件では、登校中の児童を略取・殺害し、親族に金員を要求するという「残忍、非道な所業」がなされており、犯行の動機や態様、社会的影響から見て犯情はきわめて悪質である(上記要素①〜⑤)。被告人の年齢、性格、境遇など被告人に有利な一切の事情(上記要素⑥〜⑧)を最大限に考慮したとしても、その責任は誠に重いといわざるを得ない。したがって、第一審の死刑判決を維持した原判決の判断には、刑訴法411条を適用して破棄すべき著しい量刑不当は認められない。
結論
事件番号: 昭和58(あ)479 / 裁判年月日: 昭和63年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、その責任が極めて重大で、やむを得ない場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は遊興費による多額の借金返済等のため、親戚同様の付き合いをしていた家の14歳の娘を誘拐し…
本件死刑の科刑はやむを得ないものとして適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
死刑制度の合憲性を再確認するとともに、永山基準(最一小判昭58.7.8)に先立ち、死刑選択の際の考慮要素(犯情の重大性と被告人の属性)を具体的に列挙して示した事例。司法試験においては、死刑の合憲性や量刑判断の枠組み(特に身代金目的誘拐殺人等の重大事案)を論じる際の参照となる。
事件番号: 昭和41(あ)2754 / 裁判年月日: 昭和43年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑が争われた事案において、原判決が被告人に対し極刑(死刑)を選択したことは、記録を精査してもやむを得ないものとして適法である。 第1 事案の概要:被告人が強盗殺人等の罪に問われ、一審および二審において死刑判決を受けた事案。弁護人は憲法11条(基本的人権の享有)違反や判例違反、事実誤認、量刑…
事件番号: 昭和61(あ)1353 / 裁判年月日: 平成3年6月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑が憲法36条の「残虐な刑罰」に当たらないことを再確認した上で、犯行の罪質、動機、態様、結果及び遺族の被害感情等の諸要素を総合考慮し、死刑の科刑がやむを得ないかを判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は遊興費欲しさに、自身を信頼していた9歳の児童を誘拐した。その約1時間半後、身代金取得の足…
事件番号: 昭和55(あ)914 / 裁判年月日: 昭和62年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、死刑の選択については、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、やむを得ない場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、実兄と共謀し、保険金目的の妻殺害未遂事件、保険金詐取のための自…
事件番号: 昭和58(あ)208 / 裁判年月日: 昭和62年7月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、極めて重大な罪責を免れない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は、借金返済のため女子学生(当時22歳)を誘拐して殺害し、その家族から3000万円を奪取しよ…