死刑事件(みのしろ金目的誘拐殺人事件)
判旨
死刑が憲法36条の「残虐な刑罰」に当たらないことを再確認した上で、犯行の罪質、動機、態様、結果及び遺族の被害感情等の諸要素を総合考慮し、死刑の科刑がやむを得ないかを判断すべきである。
問題の所在(論点)
死刑が憲法36条に違反しないか、及び計画性の欠如や前科の不在といった被告人に有利な事情を考慮してもなお死刑の選択が許容されるか(死刑適用における量刑判断の妥当性)。
規範
死刑の適用に際しては、犯行の罪質、動機、態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、結果の重大性(殺害された被害者の数等)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状(反省の程度等)を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪刑均衡の観点からも一般予防の観点からも極めてやむを得ない場合に限って許容される。
重要事実
被告人は遊興費欲しさに、自身を信頼していた9歳の児童を誘拐した。その約1時間半後、身代金取得の足手まといになると考え、車内でネクタイを用いて首を絞めて殺害し、死体を遺棄した。その後、生存を偽って身代金15万円を取得し、さらに1000万円を要求した。被告人は突発的に誘拐を思い付いたものの、決意後は冷静に行動しており、殺害態様も不意を突く非道なものであった。一方で、被告人には前科がなく、反省の態度を示していた。
あてはめ
本件は金銭欲から児童を誘拐・殺害・遺棄し、死後も生存を装い身代金を要求したものであり、罪質・結果ともに極めて重大である。態様についても、背中をさする振りをしながら突如殺害に及んでおり、冷酷非道といえる。強烈な遺族感情や社会的影響も軽視できない。事前計画性がなく、前科がなく、反省しているという有利な事情を考慮しても、これら悪質な犯行事情に照らせば、その罪責は誠に重いといえる。
結論
事件番号: 昭和58(あ)208 / 裁判年月日: 昭和62年7月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、極めて重大な罪責を免れない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は、借金返済のため女子学生(当時22歳)を誘拐して殺害し、その家族から3000万円を奪取しよ…
本件の死刑判決は、究極の刑罰としてやむを得ないものとして是認される。上告棄却。
実務上の射程
死刑存置を前提とした永山基準(最判昭58・7・8)を踏襲する事例判断である。特に、計画性が低い事案や殺害された被害者が1人の事案であっても、身代金目的の児童誘拐殺人という罪質の悪質性や犯行後の非道性が強い場合には、死刑が維持される可能性を示す実務上の指針となる。
事件番号: 平成10(あ)551 / 裁判年月日: 平成16年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、強盗殺人等の重大犯罪において、犯行の態様が冷酷・非情・残虐であり、結果が重大である等の事情が認められる場合には、被告人に前科がない等の情状を考慮しても死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人3名は、営利誘拐および強盗殺人等の犯行に及んだ。具体…
事件番号: 昭和41(あ)2754 / 裁判年月日: 昭和43年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑が争われた事案において、原判決が被告人に対し極刑(死刑)を選択したことは、記録を精査してもやむを得ないものとして適法である。 第1 事案の概要:被告人が強盗殺人等の罪に問われ、一審および二審において死刑判決を受けた事案。弁護人は憲法11条(基本的人権の享有)違反や判例違反、事実誤認、量刑…
事件番号: 昭和51(あ)1559 / 裁判年月日: 昭和52年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条の「残虐な刑罰」に当たらず、犯行の罪質、動機、態様、社会的影響の重大性等の諸事情に照らし、被告人に有利な事情を考慮しても死刑の選択がやむを得ないと認められる場合には、死刑の科刑は正当として是認される。 第1 事案の概要:被告人は、登校中の児童を略取して殺害し、さらにその親族に対…
事件番号: 昭和58(あ)479 / 裁判年月日: 昭和63年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、その責任が極めて重大で、やむを得ない場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は遊興費による多額の借金返済等のため、親戚同様の付き合いをしていた家の14歳の娘を誘拐し…