死刑事件
判旨
死刑の選択に際しては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、極めて重大な罪責を免れない場合に認められる。
問題の所在(論点)
死刑の適用基準(永山基準)に照らし、身代金目的の誘拐殺人および死体遺棄を行った被告人に対し、死刑を適用することが正当化されるか。
規範
死刑の選択が許容されるか否かの判断においては、①犯罪の性質、②動機、③犯行態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状の各項目を総合的に考慮し、その罪責がまことに重大であって、罪刑均衡の観点からも一般予防の見地からも死刑の選択がやむを得ないといえる場合に限って許される。
重要事実
被告人は、借金返済のため女子学生(当時22歳)を誘拐して殺害し、その家族から3000万円を奪取しようと計画した。被告人は家庭教師を依頼する名目で被害者を車に誘い出し、準備していたロープで頸部を絞めて殺害。その後、遺体を木曾川に投棄した上で、家族に多数回電話し身代金を要求した。被告人の前科は窃盗罪が1件のみであり、現在は反省の態度を示していた。
あてはめ
本件は金銭欲に基づく誘拐殺人、身代金要求、死体遺棄という性質を有し、結果は極めて重大である。周到な計画に基づき、家庭教師を装って誘い出すなど動機に酌量の余地はなく、ロープによる殺害態様も冷酷非情である。遺族の被害感情や社会的影響の大きさに鑑みれば、被告人に前科が少なく、現在は反省しているという事情を十分に考慮しても、その罪責は誠に重い。これらを総合すると、死刑の選択はやむを得ないものと評価できる。
結論
事件番号: 昭和61(あ)1353 / 裁判年月日: 平成3年6月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑が憲法36条の「残虐な刑罰」に当たらないことを再確認した上で、犯行の罪質、動機、態様、結果及び遺族の被害感情等の諸要素を総合考慮し、死刑の科刑がやむを得ないかを判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は遊興費欲しさに、自身を信頼していた9歳の児童を誘拐した。その約1時間半後、身代金取得の足…
被告人の罪責は極めて重く、第一審の死刑判決を維持した控訴審の判断は正当であり、死刑の科刑は是認される。
実務上の射程
最高裁が死刑適用の判断基準(いわゆる永山基準)を再確認し、身代金目的の誘拐殺人という凶悪犯罪における具体的なあてはめを示したものである。答案上では、死刑の是非が問われる際の考慮要素を列挙する際の規範として活用する。
事件番号: 昭和58(あ)479 / 裁判年月日: 昭和63年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、その責任が極めて重大で、やむを得ない場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は遊興費による多額の借金返済等のため、親戚同様の付き合いをしていた家の14歳の娘を誘拐し…
事件番号: 平成3(あ)476 / 裁判年月日: 平成10年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択については、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状などの諸要素を総合的に考慮し、罪責が誠に重大であって極刑がやむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は、金目的で共犯者らと共謀し、同級生Aを誘拐。当初から殺害を計画し…
事件番号: 平成4(あ)1067 / 裁判年月日: 平成10年9月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金銭欲のために計画的かつ連続して誘拐殺人を敢行し、その結果が極めて重大で社会に与えた影響も深刻な場合、前科がない等の事情を考慮しても死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、借金返済と遊興費獲得のため、若い女性を誘拐して殺害し家族から身の代金を奪おうと計画した。まず女子高校生(18歳…
事件番号: 平成13(あ)803 / 裁判年月日: 平成17年7月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断にあたっては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、罪責が極めて重大で、やむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は昭和60年から平成7年にかけ、5名の女性・女児を殺害した。内訳は、情交関係にあ…