死刑事件(富山・長野連続女性誘拐殺人事件)
判旨
金銭欲のために計画的かつ連続して誘拐殺人を敢行し、その結果が極めて重大で社会に与えた影響も深刻な場合、前科がない等の事情を考慮しても死刑の選択はやむを得ない。
問題の所在(論点)
身の代金目的の誘拐、殺人、死体遺棄等を連続して敢行した事案において、被告人に前科がない等の有利な事情を考慮してもなお、死刑を選択することが許容されるか(量刑の妥当性)。
規範
死刑の選択に当たっては、①罪質、②動機、③態様(特に殺害方法の冷酷性・非情性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯行の計画性、⑧被告人の前科、⑨犯行後の情状等の諸要素を総合的に考慮し、その罪責が誠に重く、極刑の選択がやむを得ないと認められる場合に限って許容される。
重要事実
被告人は、借金返済と遊興費獲得のため、若い女性を誘拐して殺害し家族から身の代金を奪おうと計画した。まず女子高校生(18歳)を言葉巧みに誘拐して睡眠薬で昏睡させた上、腰紐で絞殺し死体を遺棄。その後、遺族の心痛を認識しながらも、8日後には女子会社員(20歳)を同様の手口で殺害・遺棄し、家族に3000万円を要求した。被告人には前科はなかった。
あてはめ
本件は金銭欲に端を発する誘拐殺人であり、2名の尊い命を奪った結果は極めて重大である(④)。あらかじめ睡眠薬や腰紐を準備した計画的な犯行であり(⑦)、昏睡状態の被害者を絞殺する態様は冷酷かつ非情である(③)。遺族の心痛を認識しながら第二の犯行に及ぶなど動機に酌量の余地はなく(②)、遺族の被害感情や社会的影響も甚大である(⑤⑥)。これらの事情に照らせば、前科がないこと(⑧)等の有利な事情を最大限考慮しても、刑事責任は極めて重いといえる。
結論
事件番号: 平成3(あ)476 / 裁判年月日: 平成10年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択については、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状などの諸要素を総合的に考慮し、罪責が誠に重大であって極刑がやむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は、金目的で共犯者らと共謀し、同級生Aを誘拐。当初から殺害を計画し…
本件の死刑判決は、罪責の重さに照らしてやむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
いわゆる「永山基準」を再確認し、身の代金目的誘拐殺人という極めて悪質な類型の連続犯において、前科の欠如という有利な事情があっても死刑が回避されないことを示す判断指標として用いる。
事件番号: 昭和58(あ)208 / 裁判年月日: 昭和62年7月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、極めて重大な罪責を免れない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は、借金返済のため女子学生(当時22歳)を誘拐して殺害し、その家族から3000万円を奪取しよ…
事件番号: 昭和58(あ)479 / 裁判年月日: 昭和63年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、その責任が極めて重大で、やむを得ない場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は遊興費による多額の借金返済等のため、親戚同様の付き合いをしていた家の14歳の娘を誘拐し…
事件番号: 平成10(あ)551 / 裁判年月日: 平成16年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、強盗殺人等の重大犯罪において、犯行の態様が冷酷・非情・残虐であり、結果が重大である等の事情が認められる場合には、被告人に前科がない等の情状を考慮しても死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人3名は、営利誘拐および強盗殺人等の犯行に及んだ。具体…
事件番号: 平成13(あ)803 / 裁判年月日: 平成17年7月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断にあたっては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、罪責が極めて重大で、やむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は昭和60年から平成7年にかけ、5名の女性・女児を殺害した。内訳は、情交関係にあ…