死刑事件(女子中学生身のしろ金目的誘拐殺人事件)
判旨
死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、その責任が極めて重大で、やむを得ない場合に限られる。
問題の所在(論点)
死刑の選択が許容されるための判断基準(いわゆる永山基準)と、金銭目的の誘拐殺人および準強姦未遂等が重なった本件における死刑適用の妥当性。
規範
死刑の科刑が許容されるか否かの判断に際しては、①犯行の罪質、②動機、③態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状の9項目を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、罪刑均衡の観点からも一般予防の観点からも、やむを得ない場合に限って選択されるべきである。
重要事実
被告人は遊興費による多額の借金返済等のため、親戚同様の付き合いをしていた家の14歳の娘を誘拐し、薬物で昏睡させて殺害し、死体を遺棄した。その後、家族に対し多額の身代金を要求し、さらに殺害直前には準強姦未遂にも及んでいた。被告人にはさしたる前科はなく、現在は反省の態度を示しているという事実がある。
あてはめ
本件は金銭欲による誘拐殺人、身代金要求、死体遺棄、準強姦未遂を伴い、罪質及び結果は極めて重大である(①④)。計画的かつ薬物を用いた殺害態様は冷酷非情であり、動機に酌量の余地はない(②③)。親密な関係を裏切る犯行で遺族の感情は深刻であり、社会的影響も無視できない(⑤⑥)。被告人の前科のなさや反省の情といった有利な事情(⑧⑨)を十分に考慮しても、その罪責は誠に重いといえる。
結論
事件番号: 昭和58(あ)208 / 裁判年月日: 昭和62年7月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、極めて重大な罪責を免れない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は、借金返済のため女子学生(当時22歳)を誘拐して殺害し、その家族から3000万円を奪取しよ…
本件における死刑の科刑は、罪刑均衡および一般予防の観点からやむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
最高裁が死刑適用の判断枠組みを明示したリーディングケースである。答案上は、本判決が示した9つの要素を網羅的に検討しつつ、特に「被害者数」や「態様の残虐性」といった核心的要素を重視して、結論が「やむを得ない」と言えるかを論理的に構成する際の基準として用いる。
事件番号: 平成3(あ)476 / 裁判年月日: 平成10年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択については、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状などの諸要素を総合的に考慮し、罪責が誠に重大であって極刑がやむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は、金目的で共犯者らと共謀し、同級生Aを誘拐。当初から殺害を計画し…
事件番号: 平成13(あ)803 / 裁判年月日: 平成17年7月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断にあたっては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、罪責が極めて重大で、やむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は昭和60年から平成7年にかけ、5名の女性・女児を殺害した。内訳は、情交関係にあ…
事件番号: 昭和41(あ)2754 / 裁判年月日: 昭和43年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑が争われた事案において、原判決が被告人に対し極刑(死刑)を選択したことは、記録を精査してもやむを得ないものとして適法である。 第1 事案の概要:被告人が強盗殺人等の罪に問われ、一審および二審において死刑判決を受けた事案。弁護人は憲法11条(基本的人権の享有)違反や判例違反、事実誤認、量刑…
事件番号: 昭和51(あ)1559 / 裁判年月日: 昭和52年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条の「残虐な刑罰」に当たらず、犯行の罪質、動機、態様、社会的影響の重大性等の諸事情に照らし、被告人に有利な事情を考慮しても死刑の選択がやむを得ないと認められる場合には、死刑の科刑は正当として是認される。 第1 事案の概要:被告人は、登校中の児童を略取して殺害し、さらにその親族に対…