現行刑法に関する批判をするにすぎない違憲の主張が不適法とされた事例
憲法25条
判旨
被告人が自白を強要されたと疑うべき証跡がない場合、憲法38条等の違憲主張は前提を欠き、また量刑不当や現行法批判は適法な上告理由に当たらない。
問題の所在(論点)
被告人が供述の強要を主張する場合の違憲の有無、および量刑不当や法令違反の主張が刑事訴訟法405条の上告理由に該当するか。
規範
1. 自白の強制等に関する違憲主張は、記録上その疑いがある具体的証跡が認められることを前提とする。2. 単なる量刑不当の主張、法令違反の主張、または現行刑法に対する批判は、刑事訴訟法405条所定の上告理由には当たらない。
重要事実
被告人が、供述を強要されたことによる憲法違反、憲法31条・32条違反、量刑不当などを理由に上告を申し立てた事案。記録上、被告人が供述を強要されたと疑うべき客観的な証拠は存在していなかった。また、弁護人が主張する憲法違反についても、その実質は単なる法令違反や量刑不当の主張にとどまるものであった。
あてはめ
まず、強要された供述に基づく違憲主張については、記録を精査しても被告人が供述を強要されたと疑うべき証跡が認められない。したがって、その主張は前提を欠くといえる。次に、憲法違反を名目とする主張であっても、その実質が単なる法令違反や量刑不当、現行刑法への批判にすぎない場合は、上告理由としての適格性を欠くと判断される。
結論
本件上告は刑訴法405条の上告理由にあたらないため、棄却を免れない。
実務上の射程
上告趣意書において、実質的な量刑不当を憲法違反にこじつけて主張しても、最高裁は実質を見て上告理由該当性を否定するという実務運用の例証である。憲法主張を行う際は、具体的な権利侵害の証跡(供述強要の事実等)を記録上示す必要がある。
事件番号: 昭和55(あ)578 / 裁判年月日: 昭和55年7月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の取調べ過程において、供述の任意性に影響を及ぼすような違法または不当な事由が認められない場合には、当該自白調書の証拠能力は否定されない。 第1 事案の概要:被告人の供述調書(自白調書)の証拠能力が争点となった事案である。弁護人は、憲法33条、36条、38条1項・2項に違反するような違法・不当…
事件番号: 昭和44(あ)1371 / 裁判年月日: 昭和44年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】放火罪において、被告人の自白のみに基づいて犯罪事実を認定することは憲法38条3項に抵触するが、火災の状況に関する証拠等があれば、これを補強証拠として犯罪事実を認定することができる。 第1 事案の概要:被告人が放火の罪に問われた事案において、被告人は自白をしていた。弁護人は、本件の犯罪事実の認定が被…