罪数に関する判例違反の主張が被告人に不利益な主張であり不適法とされた事例
判旨
無免許運転の罪と積載量制限違反の罪が、一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合に該当し、観念的競合(刑法54条1項前段)の関係に立つとした原判断を維持した。
問題の所在(論点)
無免許運転の罪と積載量制限違反の罪の罪数関係(刑法54条1項前段の成否)。
規範
一個の運転行為によって同時に複数の交通法規に違反した場合、それらが同一の機会に行われた密接不可分な関係にあるときは、一個の行為が二個以上の罪名に触れるものとして観念的競合(刑法54条1項前段)となる。
重要事実
被告人が、有効な運転免許を受けないで、かつ積載重量の制限を超える貨物を積載して、普通貨物自動車を運転した事案。原審は、本件無免許運転の罪と積載量制限違反の罪を観念的競合として処理した。
あてはめ
本件における無免許運転と積載量制限違反は、いずれも「自動車を運転する」という一個の身体的活動を共通の態様として行われている。これらの違反は、同一の運転行為という機会において同時に実現されており、社会通念上一個の行為と評価されるべき密接な関係にあるといえる。したがって、一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合に該当すると解される。
結論
無免許運転の罪と積載量制限違反の罪は、観念的競合の関係に立つ。
実務上の射程
道路交通法違反の事案において、同一の運転機会に複数の違反態様が重なった場合の罪数判断の指標となる。実務上、運転資格の欠如(無免許)と運転方法・態様の違反(積載制限等)が重なった場合、それらを包含する「運転」という行為の単一性に着目して観念的競合と解するのが通例である。
事件番号: 昭和49(あ)2203 / 裁判年月日: 昭和50年5月23日 / 結論: 破棄自判
道路交通法六四条、一一八条一項一号の無免許運転の所為とその運転中に行われた同法二二条一項、一一八条一項二号、同法施行令一一条一号の速度違反の所為とは併合罪の関係にある。
事件番号: 昭和47(あ)725 / 裁判年月日: 昭和49年5月29日 / 結論: 棄却
同一の日時場所において、無免許で、かつ、自動車検査証の有効期間が満了した自動車を運転する所為は、道路交通法一一八条一項一号、六四条の罪と昭和四四年法律第六八号による改正前の道路運送車両法一〇八条一号、五八条の罪との観念的競合の関係にある。
事件番号: 昭和46(あ)1590 / 裁判年月日: 昭和49年5月29日 / 結論: 棄却
同一の日時場所において、無免許で、かつ、酒に酔つた状態で自動車を運転する所為は、道路交通法一一八条一項一号、六四条の罪と同法一一七条の二第一号、六五条一項の罪との観念的競合の関係にある。