一 無免許運転の所為と酒気帯び運転の所為は観念的競合の関係にある。 二 無免許運転及び酒気帯び運転の所為とその運転中犯した信号無視の所為は併合罪の関係にある。
一 無免許運転の所為と酒気帯び運転の所為の罪数 二 無免許運転及び酒気帯び運転の所為とその運転中犯した信号無視の所為の罪数
道路交通法7条,道路交通法64条,道路交通法65条1項,道路交通法118条1項1号,道路交通法119条1項1号の2,道路交通法119条1項7号の2,道路交通法施行令44条の3,刑法45条,刑法54条1項前段
判旨
無免許運転と酒気帯び運転の罪は、1つの運転行為によって同時に成立するため、刑法54条1項前段により観念的競合となる。一方、その運転継続中に犯した信号無視の罪は、運転行為そのものに包含されない別個の交通反則行為であるため、先の各罪と併合罪の関係に立つ。
問題の所在(論点)
無免許運転、酒気帯び運転、および信号無視が同時に行われた場合における罪数関係(刑法54条1項前段の観念的競合か、45条の併合罪か)が問題となる。
規範
1つの行為が2個以上の罪名に触れる場合は観念的競合(刑法54条1項前段)となる。一方、同一の運転行為中であっても、基本となる運転行為(無免許・酒気帯び等)の評価に包含されない独立した違反行為(信号無視等)が行われた場合には、実行行為が重なり合わない別個の行為として併合罪(同法45条)となる。
重要事実
被告人が、有効な運転免許を受けないで、かつ酒気を帯びた状態で自動車を運転し、その運転を継続している最中に、道路上の信号機の表示に違反して進行(信号無視)した事例。
あてはめ
無免許運転と酒気帯び運転は、いずれも「自動車を運転する」という単一の身体的活動を共通の実行行為とするものであるから、1つの行為が2個以上の罪名に触れるものとして観念的競合といえる。これに対し、信号無視は、運転という継続的な状態の中で特定の地点において行われる個別具体的な交通違反行為である。これは運転行為そのものとは評価上区別されるべき別個の動態であり、先の観念的競合の関係にある各罪との間に、実行行為の全部または一部の重なり合いは認められない。したがって、これらは併合罪の関係にあると解される。
結論
無免許運転と酒気帯び運転は観念的競合となり、これらと信号無視の罪は併合罪となる。
実務上の射程
道路交通法違反の罪数関係に関するリーディングケース。運転者の属性や状態に関する罪(無免許、酒気帯び、酒酔い等)が重なる場合は観念的競合、その運転の過程で行われた具体的な個別的違反行為(信号無視、速度超過等)との関係は併合罪とするのが実務の確立した運用である。
事件番号: 昭和39(あ)1263 / 裁判年月日: 昭和40年1月29日 / 結論: 棄却
道路交通法第六四条違反の無免許運転の所為と、同法第五七条第一項の乗車制限違反の所為とが、たまたま同一の運転の機会に行われたとしても、両者は併合罪の関係にあるものと解すべきである。
事件番号: 昭和47(あ)725 / 裁判年月日: 昭和49年5月29日 / 結論: 棄却
同一の日時場所において、無免許で、かつ、自動車検査証の有効期間が満了した自動車を運転する所為は、道路交通法一一八条一項一号、六四条の罪と昭和四四年法律第六八号による改正前の道路運送車両法一〇八条一号、五八条の罪との観念的競合の関係にある。
事件番号: 昭和46(あ)1590 / 裁判年月日: 昭和49年5月29日 / 結論: 棄却
同一の日時場所において、無免許で、かつ、酒に酔つた状態で自動車を運転する所為は、道路交通法一一八条一項一号、六四条の罪と同法一一七条の二第一号、六五条一項の罪との観念的競合の関係にある。