最高裁の判例が出た後に云渡されたこれと相反する高裁判決と刑訴法四〇五条三号にいう「判例」
判旨
無免許運転罪と酒酔い運転罪は、同一の運転行為が各罪の構成要件を同時に充足する関係にあるため、刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
同一の機会になされた「無免許運転」と「酒酔い運転」の罪数関係が、併合罪(刑法45条)となるか、あるいは観念的競合(刑法54条1項前段)となるか。
規範
刑法54条1項前段の「一個の行為が二個以上の罪名に触れるとき」(観念的競合)とは、1つの自然的行動が法律上数個の罪名に該当する場合を指す。道路交通法違反の罪相互においても、各罪が保護する法益の異同にかかわらず、客観的な実行行為が単一であれば観念的競合を認めるべきである。
重要事実
被告人が、運転免許を受けないで(無免許)、かつ酒に酔った状態(酒酔い)で車両を運転した。原判決(二審)において、無免許運転罪と酒酔い運転罪の罪数関係が争われた。
あてはめ
無免許運転罪(道路交通法117条の2の2第1号等)と酒酔い運転罪(同法117条の2第1号等)は、いずれも「車両を運転すること」をその構成要件的行為の核心としている。本件においても、被告人が酒酔い状態でかつ無免許のまま車両を走行させた行為は、物理的・時間的に重なる単一の「運転行為」であると評価できる。したがって、1つの運転行為が同時に2つの罪名に触れる場合に該当すると解される。
結論
無免許運転と酒酔い運転は観念的競合の関係にある。原判決がこれを併合罪とした点は法令違反であるが、本件事案の諸事情に照らせば、破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
道路交通法上の数罪について、行為の単一性(運転行為の共通性)に着目して観念的競合を認める確立した判例である。答案上は、罪数論において「1個の行為」の評価が問題となる場面で、行為の重なり合いを強調する根拠として引用する。
事件番号: 昭和46(あ)1590 / 裁判年月日: 昭和49年5月29日 / 結論: 棄却
同一の日時場所において、無免許で、かつ、酒に酔つた状態で自動車を運転する所為は、道路交通法一一八条一項一号、六四条の罪と同法一一七条の二第一号、六五条一項の罪との観念的競合の関係にある。
事件番号: 昭和47(あ)725 / 裁判年月日: 昭和49年5月29日 / 結論: 棄却
同一の日時場所において、無免許で、かつ、自動車検査証の有効期間が満了した自動車を運転する所為は、道路交通法一一八条一項一号、六四条の罪と昭和四四年法律第六八号による改正前の道路運送車両法一〇八条一号、五八条の罪との観念的競合の関係にある。