同一の日時場所において、無免許で、かつ、自動車検査証の有効期間が満了した自動車を運転する所為は、道路交通法一一八条一項一号、六四条の罪と昭和四四年法律第六八号による改正前の道路運送車両法一〇八条一号、五八条の罪との観念的競合の関係にある。
道路交通法六四条、一一八条一項一号の無免許運転の所為と道路運送車両法(昭和四四年法律第六八号による改正前のもの)五八条、一〇八条一号の自動車検査証の有効期間が満了した自動車を運転した所為とが同一の日時場所において行われた場合の罪数
道路交通法64条,道路交通法118条1項1号,道路運送車両法(昭和44年法律68号による改正前のもの)58条,道路運送車両法(昭和44年法律68号による改正前のもの)108条1号,刑法54条1項
判旨
刑法54条1項前段にいう一個の行為とは、法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で、行為者の動態が社会的見解上一個のものとの評価を受ける場合をいう。
問題の所在(論点)
無免許で車検切れの自動車を運転した場合、無免許運転罪と無車検車運行罪は併合罪(刑法45条)となるか、それとも一個の行為が数個の罪名に触れるものとして観念的競合(刑法54条1項前段)となるか。
規範
刑法54条1項前段の「一個の行為」とは、法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで、行為者の動態が社会的見解上一個のものとの評価を受ける場合を指す。
重要事実
被告人は、同一の日時場所において、無免許の状態で、かつ自動車検査証の有効期間が満了した普通乗用自動車を運転した。これにより、道路交通法違反(無免許運転)および道路運送車両法違反(無車検車運行)の罪に問われた。
事件番号: 昭和46(あ)1590 / 裁判年月日: 昭和49年5月29日 / 結論: 棄却
同一の日時場所において、無免許で、かつ、酒に酔つた状態で自動車を運転する所為は、道路交通法一一八条一項一号、六四条の罪と同法一一七条の二第一号、六五条一項の罪との観念的競合の関係にある。
あてはめ
被告人が自動車を運転した際、無免許であることおよび自動車検査証の有効期間が満了していることは、いずれも車両運転者または車両の属性(付随的状況)にすぎない。自然的観察の下での被告人の動態は、単一の車両運転行為であると社会的見解上評価される。したがって、この一個の運転行為が同時に二つの犯罪構成要件に該当するものと解される。
結論
無免許運転罪と無車検車運行罪は観念的競合の関係に立つ。
実務上の射程
本判決は、従来の併合罪とする判例を変更し、自然的観察による「一個の行為」の概念を確立した。司法試験においては、罪数決定の基準として本規範を明示した上で、一つの身体的動態(本件では運転)が複数の属性や禁止規定に抵触している点を指摘する際に用いる。
事件番号: 昭和47(あ)1684 / 裁判年月日: 昭和49年6月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無免許運転罪と酒酔い運転罪は、同一の運転行為が各罪の構成要件を同時に充足する関係にあるため、刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあると解するのが相当である。 第1 事案の概要:被告人が、運転免許を受けないで(無免許)、かつ酒に酔った状態(酒酔い)で車両を運転した。原判決(二審)において、無免許運…