道路交通法第六四条違反の無免許運転の所為と、同法第五七条第一項の乗車制限違反の所為とが、たまたま同一の運転の機会に行われたとしても、両者は併合罪の関係にあるものと解すべきである。
道路交通法第六四条違反の無免許運転の所為と同法第五七条第一項の乗車制限違反の所為とが同一の運転の機会に行われた場合の罪数。
道路交通法64条,道路交通法118条1項1号,道路交通法57条1項,道路交通法120条1項10号,刑法45条,刑法54条1項
判旨
無免許運転と乗車制限違反が同一の運転の機会に行われた場合であっても、両罪は一個の行為により生じたものではなく、併合罪の関係にあると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
無免許運転罪(道路交通法64条)と乗車制限違反罪(同法57条1項)が同一の運転機会になされた場合、両罪の関係は観念的競合(刑法54条1項前段)となるか、あるいは併合罪(刑法45条)となるか。
規範
刑法45条(併合罪)と刑法54条1項前段(観念的競合)の区別に関し、複数の罪が「一個の行為」によるものと言えるか否かは、行為の態様、保護法益、及び社会通念に照らして判断されるべきである。たまたま同一の機会に行われたとしても、当然に一個の行為とはみなされない。
重要事実
被告人は、道路交通法64条に違反する無免許運転を行うとともに、同法57条1項に違反する乗車制限(定員オーバー)の状態での運転を、たまたま同一の運転の機会において実行した。弁護人は、これらが同一の運転行為に含まれるとして、一罪(一所為数法)として処理すべきであると主張した。
あてはめ
無免許運転は、運転資格の欠如という運転者の属性と運転行為が結びついた罪であるのに対し、乗車制限違反は、積載・乗車方法の不備という態様に着目した罪である。これらはたまたま同一の運転の機会に行われたに過ぎず、法的評価において密接不可分な一個の身体的活動に帰属するものとは認められない。したがって、両者は一所為数法の関係にあるとはいえず、別個の独立した行為として評価されるべきである。
結論
無免許運転と乗車制限違反は、たとえ同一の機会に行われても併合罪(刑法45条)の関係にある。
実務上の射程
交通犯罪における罪数判断の基本例として重要である。実務上、一つの運転行為に伴う複数の交通法規違反は、酒気帯びと無免許のように密接な関連がない限り、原則として併合罪として処理される傾向にあることを示す判断枠組みといえる。
事件番号: 昭和47(あ)725 / 裁判年月日: 昭和49年5月29日 / 結論: 棄却
同一の日時場所において、無免許で、かつ、自動車検査証の有効期間が満了した自動車を運転する所為は、道路交通法一一八条一項一号、六四条の罪と昭和四四年法律第六八号による改正前の道路運送車両法一〇八条一号、五八条の罪との観念的競合の関係にある。