一 道路交通法六四条、一一八条一項一号の無免許運転の所為とその運転中に行われた同法二二条一項、一一八条一項二号、同法施行令一一条一号の速度違反の所為とは、併合罪の関係にある。 二 被告人が、昭和四八年八月二一日午前六時二四分ころ法定の最高速度をこえる九〇キロメートル毎時の速度で軽四輪自動車を運転し、速度違反の取締りにあたつていた警察官に現認されて停止を求められ、一旦減速して徐行状態となつたが、自己の無免許運転の事実が発覚することをおそれて加速して逃走し、同日午前六時三〇分ころ法定の最高速度をこえる一〇二キロメートル毎時の速度で同自動車を運転した場合には、二個の速度違反の罪が別個独立に成立する。
一 道路交通法六四条、一一八条一項一号の無免許運転の所為とその運転中に行われた同法二二条一項、一一八条一項二号、同法施行令一一条一号の速度違反の所為との罪数 二 時間的に接近した二個の道路交通法二二条一項、一一八条一項二号、同法施行令一一条一号の速度違反の事実が併合罪とされた事例
道路交通法22条1項,道路交通法64条,道路交通法118条1項1号,道路交通法118条1項2号,道路交通法施行令11条1号,刑法45条
判旨
無免許で自動車を運転中、速度違反の発覚を免れるために一旦減速した後、再加速して再度速度違反を犯した場合、二つの速度違反は別罪となり、無免許運転罪と併合罪の関係に立つ。
問題の所在(論点)
一旦の減速・徐行を挟んで行われた前後二つの速度違反行為、および無免許運転行為の罪数関係。
規範
単一の法益を侵害する行為であっても、時間的・場所的連続性が断絶し、かつ新たな犯意に基づく行為が介在する場合には、個別の犯罪が成立し、それらは刑法45条前段の併合罪となる。
重要事実
被告人は無免許で自動車を運転中、時速90キロメートルで走行し法定速度(60キロメートル)を超過した。警察官に現認されて停止を求められ、一旦減速して徐行状態となったが、無免許運転の発覚を恐れて再度加速して逃走し、別の場所において時速102キロメートルで走行し再度法定速度を超過した。
あてはめ
第一の速度違反後、警察官の停止要求に応じて一旦減速・徐行したことで、先行する速度違反の状態は実質的に中断している。その後の再加速は、無免許運転の露見を免れるという新たな動機に基づく逃走行為であり、先行行為とは時間的・場所的に画然と区別される別個の実行行為と評価できる。したがって、前後の速度違反は各々独立した罪を構成し、継続犯的性質を有する無免許運転罪との間でも、それぞれが併合罪の関係(刑法45条前段)に立つと解される。
結論
二つの速度違反罪が別個に成立し、これらと無免許運転罪はすべて併合罪となる。
実務上の射程
交通犯罪における罪数判断の基準を示す。一連の運転過程であっても、警察官の制止や顕著な速度変化等の事情により「行為の継続性」が遮断されれば、数罪が成立することを明示しており、実務上、犯意の更新や態様の変化を重視する指針となる。
事件番号: 平成3(あ)602 / 裁判年月日: 平成5年10月29日 / 結論: 棄却
制限速度を超過した状態で継続して普通乗用自動車を運転し、二地点を進行した場合、右二地点間の距離が約一九・四キロメートルも離れており、その間道路状況等も変化している本件事案(判文参照)においては、右二地点における速度違反の行為は併合罪の関係にある別罪を構成する。
事件番号: 昭和47(あ)725 / 裁判年月日: 昭和49年5月29日 / 結論: 棄却
同一の日時場所において、無免許で、かつ、自動車検査証の有効期間が満了した自動車を運転する所為は、道路交通法一一八条一項一号、六四条の罪と昭和四四年法律第六八号による改正前の道路運送車両法一〇八条一号、五八条の罪との観念的競合の関係にある。