制限速度を超過した状態で継続して普通乗用自動車を運転し、二地点を進行した場合、右二地点間の距離が約一九・四キロメートルも離れており、その間道路状況等も変化している本件事案(判文参照)においては、右二地点における速度違反の行為は併合罪の関係にある別罪を構成する。
制限速度を超過した状態で継続して自動車を運転した場合の二地点における速度違反の行為が併合罪の関係にある別罪を構成するとされた事例
道路交通法4条1項,道路交通法22条1項,道路交通法118条1項2号,道路交通法施行令1条の2第1項,刑法45条
判旨
制限速度を超過した状態で運転を継続した場合であっても、走行距離が離れ、道路状況や速度規制が変化しているときは、各地点の速度違反は別罪を構成し併合罪の関係に立つ。したがって、先行する地点の違反について確定判決があっても、後行の地点の違反にはその既判力は及ばず、免訴すべきではない。
問題の所在(論点)
制限速度を超過した状態で運転を継続した場合の罪数関係、および先行する速度違反の確定判決の既判力が、約19.4キロ離れた地点での速度違反に及び、刑事訴訟法337条1号により免訴すべきか。
規範
ある二地点間を速度違反の状態で運転を継続した場合、その間の運転行為が全体として一個の社会事象と観念されるときは一罪となるが、そうでないときは別個独立の罪が成立し併合罪となる。一個の社会事象と観念されるか否かは、二地点間の距離、道路状況の変化とそれに伴う最高速度規制の変動、進行速度の変更等の運転態様などを総合して判断すべきである。
重要事実
被告人は、高速道路において、(1)午後1時22分頃に制限速度を65キロ超える145キロで走行し、その後も速度超過を継続して、(2)約10分後の午後1時32分頃に、(1)地点から約19.4キロ離れた地点を、制限速度を90キロ超える160キロで走行した。この二地点間には急カーブ、急坂、トンネル等の道路状況の変化があり、制限速度も80キロから70キロへと変化していた。被告人は(1)の違反について罰金刑の略式命令が確定していた。
あてはめ
本件では、(1)地点と(2)地点が約19.4キロメートルと大きく離れている。また、その間には急カーブやトンネルといった道路状況の変化が存在し、これに伴い最高速度規制も異なっている。さらに、被告人の進行速度も145キロから160キロへと変化しており、運転態様にも変化が認められる。これらの諸事情に照らせば、本件の二地点間における速度違反行為を全体として一個の社会事象と観念することはできない。したがって、各地点の行為は別個独立の罪を構成し、併合罪の関係に立つといえる。
結論
(1)の罪と(2)の罪は併合罪であり、(1)の確定判決の既判力は(2)には及ばない。したがって、免訴すべきでないとした原判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
継続的な道路交通法違反(速度違反や無免許運転等)における罪数の決定基準を示す。答案上では、単なる時間的・場所的連続性だけでなく、距離の長さや規制内容の変化、運転態様の変動を具体的に摘示し、「一個の社会事象」と言えるか否かを論じる際の枠組みとして活用する。一罪とならない場合は、確定判決の既判力の遮断(刑訴法337条1号の免訴の成否)の文脈で論点となる。
事件番号: 昭和39(あ)1263 / 裁判年月日: 昭和40年1月29日 / 結論: 棄却
道路交通法第六四条違反の無免許運転の所為と、同法第五七条第一項の乗車制限違反の所為とが、たまたま同一の運転の機会に行われたとしても、両者は併合罪の関係にあるものと解すべきである。
事件番号: 昭和39(さ)2 / 裁判年月日: 昭和39年5月29日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】既に確定した裁判の公訴事実と全く同一の事実について、重ねて起訴がなされ有罪判決が確定した場合、後になされた裁判は憲法39条の一事不再理の原則に反し、刑訴法337条1号により免訴すべき違法なものである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和38年1月20日の無免許運転の事実につき、同年2月13日に罰金6…