道路交通法六四条、一一八条一項一号の無免許運転の所為とその運転中に行われた同法二二条一項、一一八条一項二号、同法施行令一一条一号の速度違反の所為とは併合罪の関係にある。
道路交通法六四条、一一八条一項一号の無免許運転の所為とその運転中に行われた同法二二条一項、一一八条一項二号、同法施行令一一条一号の速度違反の所為の罪数
道路交通法22条1項,道路交通法64条,道路交通法118条1項1号,道路交通法118条1項2号,刑法45条
判旨
無免許運転の所為とその運転継続中に行われた速度違反の所為は、自然的観察において社会的見解上別個のものと評価すべきであり、刑法54条1項前段の「一個の行為」には当たらない。したがって、両罪は観念的競合ではなく、併合罪(刑法45条前段)の関係に立つ。
問題の所在(論点)
無免許で自動車を運転し、その運転継続中に速度違反の所為を犯した場合、両罪は刑法54条1項前段の「一個の行為」に基づく観念的競合となるか、それとも刑法45条前段の併合罪となるか。
規範
刑法54条1項前段にいう「一個の行為」とは、法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで、行為者の動態が社会的見解上一個のものとの評価を受ける場合をいう。構成要件上の重要部分が重なり合う場合であっても、一方が他方の継続中に行われた一時的・局所的な行為にすぎないときは、社会的見解上別個の行為と解するのが相当である。
重要事実
被告人は、雇主の命を受けて普通乗用自動車を無免許で運転し、目的地に向かって進行していた。その運転継続中、藤沢市内の道路において、指定最高速度時速50キロメートルを大幅に超過する時速約87キロメートルで進行した。検察官は無免許運転と速度違反を併合罪として起訴したが、原審はこれを観念的競合と判断したため、検察官が上告した。
あてはめ
本件における速度違反の所為は、無免許運転という継続的な状態の中に含まれる一時点の行為である。これを自然的観察のもとで検討すると、速度違反は無免許運転の継続中における「一時的局所的な行為」にすぎない。無免許運転という運転行為全体の動態に対し、特定の区間での加速行為である速度違反は、社会的見解上、別個の動態として評価されるべきである。したがって、両者は「一個の行為」とみることはできず、行為の単一性は認められない。
結論
無免許運転罪と道路交通法違反(速度違反)は併合罪の関係に立つ。したがって、これらを観念的競合とした原判決は破棄されるべきである。
実務上の射程
本判決は、継続犯(または状態的に継続する犯罪)の実行中に別の犯罪が行われた場合の罪数判断の基準を示したものである。答案上は、まず「一個の行為」の定義(自然的観察・社会的見解)を示した上で、他方の犯罪が「一時的・局所的」であるか否かという時間的・場所的重なりの性質に着目して併合罪へと導く流れで使用する。酒気帯び運転と過失運転致死傷の罪数関係(観念的競合)との対比で論じられることが多い。
事件番号: 昭和49(あ)2057 / 裁判年月日: 昭和49年11月28日 / 結論: 棄却
一 無免許運転の所為と酒気帯び運転の所為は観念的競合の関係にある。 二 無免許運転及び酒気帯び運転の所為とその運転中犯した信号無視の所為は併合罪の関係にある。
事件番号: 昭和46(あ)1590 / 裁判年月日: 昭和49年5月29日 / 結論: 棄却
同一の日時場所において、無免許で、かつ、酒に酔つた状態で自動車を運転する所為は、道路交通法一一八条一項一号、六四条の罪と同法一一七条の二第一号、六五条一項の罪との観念的競合の関係にある。