一、公労法一七条が憲法に違反しないとの原判決の憲法解釈の当否が原判決の結論に影響するものでないことがその判示自体において明らかであるとして違憲の主張が不適法とされた事例 二、国鉄職員による列車の一時進行阻止行為が威力業務妨害罪の成立に必要な違法性に欠けるところはないとされた事例
憲法28条,憲法31条,憲法18条,刑法234条,刑法35条
判旨
争議行為に際して行われた犯罪構成要件該当行為の違法性は、当該行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮し、法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かによって判断される。
問題の所在(論点)
憲法28条が保障する労働基本権に基づく争議行為として行われた刑事罰該当行為について、刑法上の違法性阻却を認めるための判断枠組みが問題となる。
規範
争議行為に際して行われた犯罪構成要件に該当する行為について、刑法上の違法性が阻却されるか否かは、当該行為が争議行為に際して行われたという事実を含め、当該行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが「法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか」という基準により判定すべきである。
重要事実
被告人らは争議行為に際し、何らかの犯罪構成要件に該当する行為(具体的な罪名は判決文からは不明)に及んだ。原審は、当該行為の態様、対象、影響等の具体的事実関係に照らし、法秩序全体の見地から許容されるものではないとして、被告人らの刑法上の違法性阻却を認めなかった。これに対し、被告人らが憲法28条違反等を理由に上告した事案である。
あてはめ
本件における被告人らの各所為は、その「態様」、「対象」、「影響」等の具体的事実関係に鑑みると、正当な争議行為の範囲内にあるとはいえない。争議行為の文脈で行われたことを考慮しても、なお法秩序全体の見地から容認しうる限度を超えており、実質的違法性を欠くとは認められない。したがって、刑法上の違法性が阻却される余地はないと解される。
結論
被告人らの各所為は法秩序全体の見地から許容されず、刑法上の違法性は阻却されない。したがって、被告人らの上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
全農林警職法事件判決(最大判昭48.4.25)等の流れを汲み、労働争議に伴う刑事責任について「法秩序全体の精神」という包括的な基準で違法性を判断する。答案上は、労働組合法1条2項(正当な争議行為の免責)の適用の有無を論じる際の「正当性」の判断基準として、具体的態様や影響を総合考慮する形で用いる。
事件番号: 昭和42(あ)513 / 裁判年月日: 昭和45年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公共企業体等労働関係法17条1項に違反する争議行為であっても労働組合法1条2項が適用される余地があり、その正当性は手段の態様を含めて個別具体的に判断すべきである。また、第一審が事実を認定した上で法律判断により無罪とした場合、控訴審が事実取調べなしに自判して有罪としても刑訴法400条但書に反しない。…
事件番号: 昭和30(あ)1817 / 裁判年月日: 昭和35年5月26日 / 結論: 棄却
炭鉱において鉱員と職員とが分かれてそれぞれ労働組合と職員組合とに属している場合に、労働組合のみがストライキ実行中、争議行為に加わつていない職員が就業のため出勤するに際し、労働組合員がスクラムを組み体当りを以つて職員を押し返したときは、威力業務妨害罪を構成する。
事件番号: 昭和40(あ)2067 / 裁判年月日: 昭和41年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】争議行為としての適法性の限界を超えた違法な行為については、憲法28条による保障の対象外となり、刑事上の罪責を免れない。 第1 事案の概要:被告人らの行動が争議行為の一環として行われたが、その具体的な態様が問題となった事案。原審は、被告人らの行動をもって適法性の限界を超えた違法行為と判断し、有罪判決…