罰金の法定刑を超過してなされた略式命令に対する非常上告が認容された事例
刑訴法458条1号
判旨
犯罪後の法律によって刑が変更され、行為時法が裁判時法よりも軽い場合には、刑法6条及び10条に基づき、軽い方の法律(行為時法)を適用しなければならない。罰金等臨時措置法の改正によって罰金額の上限が引き上げられた事案において、改正前の行為に重い改正後法を適用した略式命令は、法律適用を誤った違法なものである。
問題の所在(論点)
刑法6条・10条の解釈に関し、犯罪後に法定刑を引き上げる法改正があった場合に、行為時法と裁判時法のいずれを適用すべきかが問題となる。また、誤って重い裁判時法を適用して処断刑の範囲を超えた刑を科した場合の救済方法(非常上告の理由)が問われる。
規範
刑法6条は「犯罪後の法律により刑の変更があったときは、その軽いものに従う」と規定し、刑法10条は刑の軽重を判断する基準を定める。したがって、行為後に法定刑を重くする法改正があった場合、憲法39条前段の遡及処罰禁止の趣旨に基づき、原則として行為時の軽い刑を適用すべきである(いわゆる「従刑選択」の原則)。
重要事実
被告人は昭和47年3月24日に無免許で貨物自動車を運転し、追突事故を起こして3名に傷害を負わせた。当時、業務上過失傷害罪の罰金上限は罰金等臨時措置法により5万円以下であったが、同年7月1日の法改正により上限が「50倍」から「200倍」へ引き上げられた。簡易裁判所は、行為後の重い法律を適用して、被告人に対し罰金18万円の略式命令を発し、これが確定した。
あてはめ
本件において、被告人の業務上過失傷害の所為は改正法施行前の行為である。改正後の罰金上限は引き上げられているため、刑法10条に照らして改正前(行為時)の刑の方が軽い。それゆえ、刑法6条に基づき、軽い行為時の法定刑(罰金5万円以下)を適用すべきである。道路交通法違反との併合罪として処理しても、適用されるべき処断刑の上限は罰金10万円となる。これに対し、原略式命令が罰金18万円を科したのは、科し得る罰金の多額を超えた不当な刑の言渡しであり、法律の適用を誤ったものである。
事件番号: 昭和49(さ)1 / 裁判年月日: 昭和49年3月19日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により刑の変更があった場合、刑法6条および10条に基づき、行為時法と裁判時法を比較して最も軽い法の規定を適用しなければならない。本件では、法定刑の上限が引き上げられた改正後の法律ではなく、より軽微な上限を定めていた行為時の法律を適用すべきである。 第1 事案の概要:被告人は業務上過失傷…
結論
原略式命令を破棄する。被告人を罰金10万円に処し、完納できない場合は1日1000円換算で労役場に留置する。
実務上の射程
本判決は、刑法6条の「軽法優先」の原則を具体的事案に適用したものである。答案作成上は、罪刑法定主義(遡及処罰の禁止)の具体化として本条を指摘し、法改正の前後で法定刑の比較を行う際の論拠として使用する。特に非常上告の手続(刑訴法458条1号)において、「被告人のため不利益」な法令適用の誤りがあった場合の典型例として理解すべきである。
事件番号: 昭和24(そ)3 / 裁判年月日: 昭和24年12月26日 / 結論: 破棄自判
原審尾道簡易裁判所の認定した事実は、被告人は昭和二二年九月一九日御調郡aとb間の巡航船A丸船内において大阪市居住番地不詳氏名不詳の者から政府に納付すべき葉煙草九瓩を代金三七三五圓で買受けたと言うのである。之れに對し原審において昭和二四年一月二五日被告人を煙草專賣法違反として同法第三四條、第四八條第一項、刑法第一八條、第…
事件番号: 平成4(さ)3 / 裁判年月日: 平成4年11月20日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により刑の変更があった場合、刑法6条及び10条に基づき、行為時法と裁判時法を比較して最も軽い刑を適用しなければならない。本件では、行為時法の罰金上限額(20万円)を超える罰金刑(40万円)を科した略式命令は法令違反であり、破棄を免れない。 第1 事案の概要:被告人は平成3年3月28日、…
事件番号: 昭和47(さ)3 / 裁判年月日: 昭和48年2月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】犯罪後に法律の改正により刑が変更された場合、刑法6条及び10条に基づき、行為時と裁判時の刑を比較して軽い方の法律を適用すべきである。本件のように行為時の法定刑の上限を超える刑を科した略式命令は、法令違反であり破棄を免れない。 第1 事案の概要:被告人は傷害事件を起こしたが、その行為は昭和47年7月…
事件番号: 昭和47(さ)2 / 裁判年月日: 昭和48年2月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により罰金の法定刑が引き上げられた場合、刑法6条および10条に基づき、より刑の軽い行為時の法律を適用すべきである。行為時の法定刑の上限を超える罰金に処した略式命令は、法令違反であり破棄を免れない。 第1 事案の概要:被告人が傷害罪を犯した当時、同罪の罰金上限は2万5000円であったが、…