法定刑超過による非常上告
刑訴法458条
判旨
犯罪後の法律により刑の変更があった場合、刑法6条及び10条に基づき、行為時法と裁判時法を比較して最も軽い刑を適用しなければならない。本件では、行為時法の罰金上限額(20万円)を超える罰金刑(40万円)を科した略式命令は法令違反であり、破棄を免れない。
問題の所在(論点)
犯罪行為時と裁判(略式命令)時で法定刑が変更された場合において、適用すべき法律の選択を誤り、行為時の法定刑の上限を超える刑を科すことは許されるか(刑法6条、10条の適用)。
規範
刑法6条は、犯罪後の法律により刑の変更があったときは、その軽いものに従うと定めている。また、刑法10条は刑の軽重の比較基準を定めており、同種の刑については最高刑の重いものを重いとし、最高刑が等しいときは最低刑の重いものを重いとする。これらにより、行為時と裁判時の法定刑を比較し、被告人に最も有利な(軽い)刑を適用すべきである。
重要事実
被告人は平成3年3月28日、業務上過失傷害罪にあたる交通事故を起こした。当時の法定刑(改正前刑法211条・罰金等臨時措置法3条)は「5年以下の懲役若しくは禁錮又は20万円以下の罰金」であった。しかし、その後法律が改正され、同年5月7日の施行により罰金刑の上限が「50万円以下」に引き上げられた。簡易裁判所は、平成4年3月10日に被告人に対し、改正後の法律を適用して罰金40万円の略式命令を発付し、確定した。
あてはめ
被告人の行為は平成3年3月28日であり、罰金の上限を50万円とする改正法の施行(同年5月7日)前である。行為時の法律によれば罰金刑の最高額は20万円であったのに対し、裁判時(改正後)の最高額は50万円である。刑法10条の基準に照らせば、行為時の法律の方が「軽い」といえる。したがって、刑法6条に基づき、軽い行為時の法律を適用すべきであった。それにもかかわらず、行為時の上限を超える罰金40万円を処した原略式命令は、適用すべき法令の選択を誤った違法がある。
事件番号: 昭和49(さ)1 / 裁判年月日: 昭和49年3月19日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により刑の変更があった場合、刑法6条および10条に基づき、行為時法と裁判時法を比較して最も軽い法の規定を適用しなければならない。本件では、法定刑の上限が引き上げられた改正後の法律ではなく、より軽微な上限を定めていた行為時の法律を適用すべきである。 第1 事案の概要:被告人は業務上過失傷…
結論
原略式命令を破棄する。被告人を罰金20万円に処する(行為時の法定刑の範囲内で刑を再画定する)。
実務上の射程
憲法39条の「実行の時に適法であった行為」に関連する「法の不遡及」の原則を、刑罰の種類・程度の面から具体化した刑法6条の基本原則を確認する事例。罪刑法定主義の観点から、被告人に不利益な遡及適用を否定する答案構成で活用する。
事件番号: 昭和47(さ)2 / 裁判年月日: 昭和48年2月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により罰金の法定刑が引き上げられた場合、刑法6条および10条に基づき、より刑の軽い行為時の法律を適用すべきである。行為時の法定刑の上限を超える罰金に処した略式命令は、法令違反であり破棄を免れない。 第1 事案の概要:被告人が傷害罪を犯した当時、同罪の罰金上限は2万5000円であったが、…
事件番号: 昭和47(さ)3 / 裁判年月日: 昭和48年2月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】犯罪後に法律の改正により刑が変更された場合、刑法6条及び10条に基づき、行為時と裁判時の刑を比較して軽い方の法律を適用すべきである。本件のように行為時の法定刑の上限を超える刑を科した略式命令は、法令違反であり破棄を免れない。 第1 事案の概要:被告人は傷害事件を起こしたが、その行為は昭和47年7月…
事件番号: 昭和56(さ)2 / 裁判年月日: 昭和56年4月30日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】傷害罪の罰金法定刑の最高額が10万円であるにもかかわらず、これを超過して被告人を罰金20万円に処した略式命令は、法令に違反し、かつ被告人に不利益であるため、非常上告により破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は昭和54年10月16日、被害者に対し手拳で殴打する等の暴行を加え、加療約2週間…
事件番号: 昭和40(さ)3 / 裁判年月日: 昭和40年7月9日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】法定刑の最高額を超過する罰金を科した略式命令は、法令に違反し、かつ被告人のため不利益であることが明白であるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は傷害の事実により札幌簡易裁判所から罰金30,000円の略式命令を受け、同命令は昭和39年11月27日に確定した。しかし、…