罰金の法定刑を超過してなされた略式命令に対する非常上告が認容された事例
刑訴法458条
判旨
犯罪後の法律により刑の変更があった場合、刑法6条および10条に基づき、行為時法と裁判時法を比較して最も軽い法の規定を適用しなければならない。本件では、法定刑の上限が引き上げられた改正後の法律ではなく、より軽微な上限を定めていた行為時の法律を適用すべきである。
問題の所在(論点)
犯罪後に法律の改正によって法定刑が引き上げられた場合(刑の変更)、刑法6条の「軽いもの」としてどの時点の法律を適用すべきか。また、行為時の法定刑の上限を超える刑を科すことの適法性が問題となる。
規範
刑法6条は「犯罪後の法律により刑の変更があったときは、その軽いものに従う」と規定し、同法10条は刑の軽重の比較基準を定めている。したがって、事後に法定刑が加重された場合、憲法39条の不遡及の原則および刑法6条の趣旨に照らし、最も軽い「行為時の法律」の定めに従うべきである。
重要事実
被告人は業務上過失傷害の罪に問われたが、その行為は昭和47年の罰金等臨時措置法改正(法定刑の上限を5万円から20万円に引き上げ)より前に行われたものであった。しかし、略式命令においては改正後の法律が適用され、当時の法定刑上限である5万円を超える罰金12万円の刑に処せられた。この略式命令は既に確定していたが、検事総長による非常上告がなされた事案である。
あてはめ
被告人の行為は、法定刑の最高額が5万円であった旧法の施行下で行われた。犯罪後の法律改正により最高額が20万円へと変更されたが、刑法6条および10条に基づき比較すると、行為時の方が裁判時よりも「軽い」といえる。したがって、行為時の法律を適用すべきであるところ、原略式命令はこれに反して12万円の罰金を科しており、法令の適用を誤って被告人に不利益な刑を科したものと解される。
事件番号: 平成4(さ)3 / 裁判年月日: 平成4年11月20日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により刑の変更があった場合、刑法6条及び10条に基づき、行為時法と裁判時法を比較して最も軽い刑を適用しなければならない。本件では、行為時法の罰金上限額(20万円)を超える罰金刑(40万円)を科した略式命令は法令違反であり、破棄を免れない。 第1 事案の概要:被告人は平成3年3月28日、…
結論
原略式命令は法令に違反し、被告人に不利益であるため、刑訴法458条1号但書により破棄される。被告人を行為時の法定刑の範囲内である罰金5万円に処する。
実務上の射程
本判決は、刑罰法令の不遡及の原則(憲法39条)を具体化した刑法6条の適用場面を明確にしている。法定刑の引上げがあった場合には、被告人にとって有利な旧法を適用しなければならないという刑事法の基本原則を示すものであり、罪刑法定主義の観点から重要な射程を有する。
事件番号: 昭和47(さ)3 / 裁判年月日: 昭和48年2月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】犯罪後に法律の改正により刑が変更された場合、刑法6条及び10条に基づき、行為時と裁判時の刑を比較して軽い方の法律を適用すべきである。本件のように行為時の法定刑の上限を超える刑を科した略式命令は、法令違反であり破棄を免れない。 第1 事案の概要:被告人は傷害事件を起こしたが、その行為は昭和47年7月…
事件番号: 昭和49(さ)2 / 裁判年月日: 昭和49年5月30日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律によって刑が変更され、行為時法が裁判時法よりも軽い場合には、刑法6条及び10条に基づき、軽い方の法律(行為時法)を適用しなければならない。罰金等臨時措置法の改正によって罰金額の上限が引き上げられた事案において、改正前の行為に重い改正後法を適用した略式命令は、法律適用を誤った違法なもので…
事件番号: 昭和47(さ)2 / 裁判年月日: 昭和48年2月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により罰金の法定刑が引き上げられた場合、刑法6条および10条に基づき、より刑の軽い行為時の法律を適用すべきである。行為時の法定刑の上限を超える罰金に処した略式命令は、法令違反であり破棄を免れない。 第1 事案の概要:被告人が傷害罪を犯した当時、同罪の罰金上限は2万5000円であったが、…
事件番号: 昭和45(さ)1 / 裁判年月日: 昭和45年4月16日 / 結論: 破棄自判
昭和四三年法律第六一号による改正刑法施行前の業務上過失傷害の所為につき懲役刑を言渡した判決は、刑法六条に違反したものであり、被告人に不利益であるから、破棄すべきである。