青色申告の承認を受けた者又は法人の代表者がある年又は事業年度において所得税又は法人税を免れるため逋脱行為をし、その後その年又は事業年度にさかのぼつてその承認を取り消された場合におけるその年又は事業年度の逋脱税額は、青色申告の承認がないものとして計算した所得税法一二〇条一項三号に規定する所得税額又は法人税法七四条一項二号に規定する法人税額から申告にかかる所得税額又は法人税額を差し引いた額である。
青色申告納税者の逋脱行為と逋脱税額の算定
所得税法150条,所得税法238条,法人税法127条,法人税法159条
判旨
青色申告の承認を受けた者が逋脱行為を行い、後にその承認が遡及的に取り消された場合、逋脱税額は承認がないものとして計算した税額を基礎として算定すべきである。
問題の所在(論点)
青色申告の承認を受けた者が逋脱行為を行い、その後に当該承認が遡及的に取り消された場合、逋脱罪における「逋脱税額」の算定の基礎となる税額は、青色申告の特典(損金算入等)を適用した状態で計算すべきか、あるいは承認がないものとして計算すべきか。
規範
所得税法238条又は法人税法159条の逋脱罪における逋脱税額の算定にあたっては、青色申告の承認が遡及的に取り消された場合、当該承認がないものとして計算した法定の税額(所得税法120条1項3号又は法人税法74条1項2号所定の額)から、実際の申告額を控除した金額をもって逋脱税額とする。
重要事実
被告人両名は、所得税及び法人税を免れる目的で逋脱行為を行った。被告人らは当初、青色申告の承認に基づき価格変動準備金等の必要経費・損金算入を行って確定申告をしていたが、後に当該事業年度に遡って青色申告の承認が取り消された。原審は、逋脱罪の成否に関する限り、事後の承認取消は既になされた損金算入等の効果を左右しないと判断したが、検察官が判例違反を理由に上告した。
あてはめ
本件において、被告人らは青色申告の特典を利用して過少な申告を行っているが、その前提となる青色申告の承認自体が後に遡及的に取り消されている。逋脱税額は「正当な税額」と「申告税額」の差額であるところ、承認が遡及的に取り消された以上、その年度の正当な税額は、青色申告の承認がない通常の申告(白色申告等)を前提とした法定の税額として算出されるべきである。したがって、原審が事後の取消を考慮せず、承認があることを前提に税額を算定したことは、逋脱税額の解釈を誤ったものといえる。
結論
被告人両名に対する有罪部分を破棄し、差し戻す。逋脱税額は青色申告の承認がないものとして再計算されなければならない。
実務上の射程
租税刑法における「逋脱税額」の算定に関し、行政上の遡及的取消処分が刑事上の犯罪構成要件(逋脱額)に直接影響を与えることを認めた点に射程がある。答案上は、青色申告取消等の行政処分の効果が刑事手続における税額確定に及ぶか否かが論点となる場合に、本判例の枠組みを引用して「承認がないものとして計算した税額」を基準とすべきと論じる。
事件番号: 昭和47(あ)319 / 裁判年月日: 昭和49年10月22日 / 結論: 棄却
法人税法一五九条の逋脱犯の逋脱税額算定にあたり、青色申告の承認を受けた被告会社がその承認に基づいてした貸倒引当金の損金算入等の処理を事後になされた青色申告の承認の取消に基づいて否認した結果生じる所得額の増減を算入すべきである旨の原判示は相当である(昭和四七年(あ)第一三四四号同四九年九月二〇日第二小法廷判決参照)。