法人税法一五九条の逋脱犯の逋脱税額算定にあたり、青色申告の承認を受けた被告会社がその承認に基づいてした貸倒引当金の損金算入等の処理を事後になされた青色申告の承認の取消に基づいて否認した結果生じる所得額の増減を算入すべきである旨の原判示は相当である(昭和四七年(あ)第一三四四号同四九年九月二〇日第二小法廷判決参照)。
青色申告納税者の逋脱行為と逋脱税額の算定
法人税法127条,法人税法159条,法人税法164条1項
判旨
法人税法上の逋脱税額の算定にあたり、青色申告の承認取消しによって各種準備金の損金算入が否認された結果生じる所得額の増減を算入して算出することは、憲法や適正手続に反しない。また、行政上の制裁である重加算税と刑罰である逋脱罪の併科は、二重処罰の禁止等に抵触せず合憲である。
問題の所在(論点)
1. 青色申告の承認取消しに伴い否認された損金を考慮して、刑事罰の対象となる逋脱税額を算定することは許されるか。2. 重加算税と逋脱罪の刑罰を併科することは、憲法31条、39条等に違反しないか。
規範
1. 法人税法上の逋脱犯における「逋脱税額」の算定に際しては、事後的な青色申告の承認取消しという法的効果を反映させ、その取消しによって否認された損金(貸倒引当金、価格変動準備金等)を考慮して所得額及び税額を算出する。2. 国税通則法上の重加算税と法人税法上の刑罰は、その目的・性質を異にするため、両者を併科することは憲法31条(適正手続)等に違反しない。
重要事実
被告会社は青色申告の承認を受けていたが、虚偽の申告等により法人税を逋脱した。その後、税務当局によって青色申告の承認が取り消された。原判決は、この取消しに基づき、本来青色申告を前提として認められていた貸倒引当金や価格変動準備金等の損金算入を否認した上で、逋脱税額を算定した。これに対し被告側は、承認取消しに伴う損金否認を逋脱額の算定に反映させることや、重加算税と刑罰の併科が不当であるとして上告した。
あてはめ
1. 青色申告の承認が取り消された場合、その承認を前提とした特例的な損金算入(引当金等)の法的根拠は遡及的に失われる。したがって、脱税という犯罪事実の客観的な評価(逋脱税額の確定)においても、これら損金算入を否定した正当な所得額に基づいて税額を算出するのが法の趣旨に合致する。2. 行政上の制裁である重加算税は、申告秩序の維持を目的とする行政上の義務違反に対する措置であり、刑事罰は反社会的な行為に対する処罰である。両者は目的・性格を異にするため、併科しても二重処罰や不当な差別には当たらない。
結論
1. 青色申告の承認取消しによる損金否認を反映した逋脱税額の算定は適法である。2. 重加算税と刑罰の併科は合憲である。
実務上の射程
逋脱額の算定において、事後的な行政処分(承認取消し)の結果が刑事上の犯罪事実に影響を及ぼすことを認める。また、租税犯において行政罰と刑事罰が併科される場合の違憲主張を排斥する際の決定的な根拠となる。
事件番号: 昭和49(あ)884 / 裁判年月日: 昭和50年2月20日 / 結論: 破棄差戻
青色申告の承認を受けた者又は法人の代表者がある年又は事業年度において所得税又は法人税を免れるため逋脱行為をし、その後その年又は事業年度にさかのぼつてその承認を取り消された場合におけるその年又は事業年度の逋脱税額は、青色申告の承認がないものとして計算した所得税法一二〇条一項三号に規定する所得税額又は法人税法七四条一項二号…