租税逋脱犯における逋脱所得金額を認定するに当たり、一定期間の期首と期末の財産状態を比較することを基本にしてその期間の利益すなわち所得の金額を算定するいわゆる財産増減法を用いることも許される。
租税逋脱犯における逋脱所得金額の認定に当たりいわゆる財産増減法を用いることの適否
法人税法22条,法人税法159条1項,刑訴法317条
判旨
租税逋脱犯における逋脱所得の金額を認定する方法として、一定期間の期首・期末の財産状態を比較して所得を算定する「財産増減法」を用いることは、許容される。
問題の所在(論点)
租税逋脱罪の構成要件要素である「逋脱所得の金額」を認定するにあたり、直接的な収支記録によらず、期首と期末の財産増減を基礎として所得を推計する「財産増減法」を用いることが許されるか。
規範
租税逋脱犯における逋脱所得金額の認定において、帳簿書類等の直接的な証拠に基づき所得を算出することが困難な場合には、一定期間の期首・期末の財産状態を比較することを基本にして、その期間の利益(所得金額)を算定するいわゆる「財産増減法」を用いることも許容される。
重要事実
被告人が租税を免れたとされる租税逋脱事件において、逋脱所得金額の認定方法が争点となった。弁護側は、財産増減法による所得認定は憲法31条(適正手続き)や84条(租税法律主義)に違反し、認定方法として不当である旨を主張して上告した。
あてはめ
所得金額の認定は、本来は帳簿等の直接証拠によるべきであるが、実務上、帳簿の不備や隠匿がある場合には客観的な財産状態の変化から所得を推認せざるを得ない。財産増減法は、一定期間内の純資産の増加額に消費額を加え、非課税所得等を差し引くことで合理的に所得を算出する手法であり、その合理性が担保される限り、適正な事実認定の手法として否定されるものではない。
結論
租税逋脱犯における所得金額の認定方法として、財産増減法を用いることは許容される。
実務上の射程
本判決は、推計課税の考え方を刑罰事由である逋脱額の認定にも導入することを認めたものである。答案上は、帳簿が不存在・不実である場合の所得認定手法として本判例を引用し、推計認定の合理性を論証する際の根拠とする。ただし、刑事裁判においては「疑わしきは被告人の利益に」の原則が働くため、推計の基礎となる財産状態の確定には厳格な証明が求められる点に留意が必要である。
事件番号: 昭和57(あ)336 / 裁判年月日: 昭和57年9月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】脱税事件における所得金額の認定において、証拠から合理的に推認される計算方法を用いることは経験則に合致し、合理的である。 第1 事案の概要:被告人が所得税法違反(脱税)に問われた事案において、原審(控訴審)は一定の認定方法を用いて被告人の所得金額を算出した。これに対し弁護人は、当該認定方法が不合理で…
事件番号: 昭和62(あ)101 / 裁判年月日: 平成2年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】財産増減法を用いて逋脱所得金額を算定する場合、期首・期末の資産残高の調整を通じて、譲渡された山林に係る必要経費を適切に控除した所得金額を算定しなければならない。ただし、資産評価の方法が実質的に必要経費の調整と同一の結果をもたらし、被告人に不利益を及ぼさない場合には、厳密な調整を欠いても正義に反する…