判例違反の主張が判例不適切及び欠前提とされた事例
判旨
所得税法違反等の事案において、財産増減法による所得金額の認定は、他により合理的な所得金額の認定方法がない場合には、許容される適法な認定手法である。
問題の所在(論点)
刑事裁判における所得税法違反等の罪体認定において、財産増減法による所得金額の推計認定が許容されるための要件が問題となる。
規範
推計課税の手法の一つである「財産増減法」を用いた所得金額の認定は、直接的な証拠や他のより合理的な認定方法が存在しない場合に限り、その合理性が認められる。
重要事実
被告人が所得税法違反等に問われた事案において、原審(東京高裁)は、被告人の期首・期末の財産状態の比較から所得を算出する「財産増減法」を用いて所得金額を認定した。これに対し弁護人は、他により合理的な所得認定方法があるにもかかわらず財産増減法を採用したのは判例違反であるとして上告した。
あてはめ
本件記録によれば、本件においては財産増減法以外に、より合理的な所得金額の認定方法が存在しなかったことが明らかである。したがって、他に代替し得る合理的な手法がない以上、財産増減法によって所得金額を算定した原判決の手法に不合理な点は認められない。
結論
他に合理的な所得金額の認定方法がない本件において、財産増減法を用いて所得を認定した原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
租税刑罰事案において、帳簿の不備等により実額計算が困難な場合の所得認定手法として財産増減法を用いる際の補充的要件を裏付ける判例として機能する。答案上は、推計認定の合理性を論じる際の消極的要件(他に手段がないこと)として引用すべきである。
事件番号: 昭和57(あ)336 / 裁判年月日: 昭和57年9月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】脱税事件における所得金額の認定において、証拠から合理的に推認される計算方法を用いることは経験則に合致し、合理的である。 第1 事案の概要:被告人が所得税法違反(脱税)に問われた事案において、原審(控訴審)は一定の認定方法を用いて被告人の所得金額を算出した。これに対し弁護人は、当該認定方法が不合理で…
事件番号: 昭和62(あ)101 / 裁判年月日: 平成2年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】財産増減法を用いて逋脱所得金額を算定する場合、期首・期末の資産残高の調整を通じて、譲渡された山林に係る必要経費を適切に控除した所得金額を算定しなければならない。ただし、資産評価の方法が実質的に必要経費の調整と同一の結果をもたらし、被告人に不利益を及ぼさない場合には、厳密な調整を欠いても正義に反する…