規定の不明確、不当解釈の危険性を理由とする違憲の主張(道路交通法七〇条、一一九条二項、一項九号所定の過失による安全運転義務違反の罪に関するもの)が欠前提とされた事例
憲法31条
判旨
道路交通法70条の安全運転義務違反の規定は、憲法31条が要求する刑罰法規の明確性の原則に反せず、合憲である。同条の規定内容が極めて曖昧不明確であるとはいえず、不当な解釈や濫用を招く危険性が明白であるとも認められない。
問題の所在(論点)
道路交通法70条(安全運転義務違反)の規定は、憲法31条が要求する刑罰法規の明確性の原則に照らし、合憲といえるか。
規範
刑罰法規が憲法31条に反して無効とされるのは、その規定が曖昧不明確であり、通常の判断能力を有する一般人の理解において、何が禁止されているのかの基準が読み取れない場合に限られる。また、規定の文言から不当な解釈や濫用の危険性が明白に存在するか否かが判断の基準となる。
重要事実
上告人は、道路交通法70条(安全運転義務)、119条1項9号、2項に規定される過失による安全運転義務違反の罪に問われた。これに対し弁護人は、当該規定が極めて曖昧不明確であり、憲法31条、81条、98条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
道路交通法70条の規定は、道路交通の具体的状況下で、車両等の運転者が遵守すべき注意義務を一般的・包括的に定めたものである。本判決は、この規定が「極めてあいまい不明確」であるとは認められないとし、また「不当解釈と濫用を招来すべき危険性」が明白に存在するとも認められないと評価した。したがって、一般人の予見可能性を奪うほどの不明確さは存在しないと解される。
結論
道路交通法70条、119条1項9号および2項の規定は憲法31条等に違反せず、合憲である。
実務上の射程
道路交通法に限らず、一般的・抽象的な文言を含む刑罰法規が明確性の原則(憲法31条)に抵触するか否かを論じる際のリーディングケースとして利用できる。特に、事案の性質上、網羅的な列挙が困難な包括的禁止規定の合憲性を肯定する根拠として引用される。
事件番号: 昭和43(あ)807 / 裁判年月日: 昭和43年9月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無免許運転に対する道路交通法の法定刑(懲役6月以下)は、昨今の交通事情に照らせば、犯罪に対する刑罰として著しく均衡を失しているとは認められず、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は無免許運転の罪(道路交通法64条、118条1項1号)に問われた。これに対し弁護人は、無免許運転は形式犯に…