判例違反の主張を原認定にそわない事実関係を前提にするとして不適法とした事例
判旨
原審において主張及び判断を経ていない事項に関する憲法違反の主張や、原審の認定に沿わない事実関係を前提とする判例違反の主張は、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法405条の上告理由において、(1)原審で主張・判断されていない憲法違反を主張すること、および(2)原審の事実認定に反する事実を前提とした判例違反の主張をすることが許されるか。
規範
刑事訴訟法405条各号所定の上告理由について、(1)憲法違反(1号)の主張は原審において主張及び判断を経た事項に限られ、(2)判例違反(2号・3号)の主張は原審の適法な事実認定を前提とするものでなければならない。
重要事実
上告人は、原判決に対して上告を申し立てた。その上告趣意において、第一に、原審では主張も判断もされていなかった事項について憲法38条1項(自己負罪拒否特権)違反を主張した。第二に、原審が認定した事実関係とは異なる事実関係を前提として、判例違反を主張した。
あてはめ
上告人の第一の主張は、憲法違反を理由とするものであるが、原審において何ら主張も判断もされていない事項を対象としており、適法な上告理由の形式を備えていない。また、第二の主張は、判例違反をいうものであるが、その前提となる事実は原審の認定に沿わない独自のものであり、原判決の法令適用の当否を争うための正当な基礎を欠いている。したがって、いずれも刑事訴訟法405条の上告理由としての適格を欠くといえる。
結論
本件上告は刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないため、同法414条、386条1項3号に基づき棄却される。
事件番号: 昭和48(あ)2535 / 裁判年月日: 昭和49年2月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審において主張および判断を経ていない事項に関する憲法違反の主張は、刑事訴訟法405条所定の上告理由にあたらない。 第1 事案の概要:被告人側の弁護人が、憲法38条(黙秘権・自白の強要禁止)違反を理由として上告を申し立てたが、当該事項は第一審および控訴審(原審)の審理過程において一度も主張されてお…
実務上の射程
司法試験の答案作成においては、上告審の構造が事後審であることを踏まえ、上告理由の制限を論じる際の基礎的知見となる。特に「原審の事実認定を前提としない不服」や「原審で審理されていない新主張」が上告理由として排斥されるという実務上の運用を確認する際に有用である。
事件番号: 昭和47(あ)2561 / 裁判年月日: 昭和48年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において憲法違反を主張するためには、原則として原審においてその主張及び判断を経ていなければならない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件について上告を提起した際、弁護人が憲法38条(黙秘権・自白の強要禁止等)違反を主張した。しかし、当該主張は原審(控訴審)においてはなされておらず、原審の判断…
事件番号: 昭和47(あ)2281 / 裁判年月日: 昭和48年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由に当たらない憲法違反の主張や単なる量刑不当の主張は、刑事訴訟法405条の上告理由を構成せず、職権調査によっても原判決を破棄すべき事由は認められない。 第1 事案の概要:被告人が憲法14条(法の下の平等)および32条(裁判を受ける権利)違反、ならびに量刑不当を理由として上告を申し立てた事案で…
事件番号: 昭和43(あ)2463 / 裁判年月日: 昭和46年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において原判決の判断していない事項について判例違反を主張することは、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が第一審判決における第一の所為と同第二の所為の罪数関係(併合罪か一所為数法か)を争い上告したが、この点は原審(二審)において何ら主張されておらず、原判決も判断を示していな…