量刑事情と憲法一四条
憲法14条
判旨
裁判所が量刑において、被告人が職業運転手であることを考慮し、運転上の基本的注意義務違反を重く評価することは、社会的身分による不当な差別に当たらず、憲法14条に違反しない。
問題の所在(論点)
刑事裁判の量刑において、被告人が職業運転手であることを「一つの情状」として考慮することが、憲法14条1項の禁ずる「社会的身分」による不当な差別に該当するか。
規範
憲法14条1項の法の下の平等に反するか否かは、当該区別が合理的な根拠に基づき、目的との間に合理的な関連性があるかによって判断される。刑罰の量定(量刑)において、被告人の属性や犯罪の態様に係る事情を考慮することは、刑事責任の個別化という適正な目的に基づくものであり、不当な差別に当たらない。
重要事実
被告人は職業運転手であり、業務として自動車を運転中、交差点において信号を見落とすという基本的な注意義務を怠り事故を起こした。原判決は、被告人が「職業運転手」という立場にありながら、基本的な義務を怠ったことを量刑上の情状として考慮し、刑を言い渡した。これに対し弁護側は、職業運転手であることを理由に重く処罰することは、社会的身分による不当な差別であり憲法14条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
原判決は、単に被告人の職業という属性のみを捉えて差別したのではなく、職業運転手という立場に付随する高度の注意義務が期待される状況下で、信号見落としという「運転に際しての基本的注意義務違反」をした事実を重視している。これは犯罪の態様や責任の程度を評価する上での情状の一つとして考慮されたにすぎない。したがって、専門的技能を要する職業に従事する者の注意義務違反を重く評価することは、量刑上の合理的な根拠に基づく区別であるといえる。
結論
被告人が職業運転手であることを量刑上の情状として考慮することは、社会的身分による不当な差別には当たらず、憲法14条に違反しない。
実務上の射程
量刑における憲法14条違反の主張に対する反論として活用できる。特定の職業に従事する者が、その職務に関連して犯罪を犯した場合に、その立場を情状として重く評価することは原則として裁判所の裁量の範囲内であることを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和41(あ)446 / 裁判年月日: 昭和41年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑の判断において、犯行後の情状や前科等の諸要素を総合的に考慮することは、社会的地位等による不当な差別には当たらず、法の下の平等を定めた憲法14条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は無免許運転による事故を起こした際、身代わりの犯人を警察署に出頭させた。また、被告人には過去にも度々無免許運転を…
事件番号: 昭和26(あ)4470 / 裁判年月日: 昭和29年1月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】踏切警手としての地位のみを理由に処罰されることはなく、具体的な過失等の犯罪構成要件に該当する行為がある場合に限り処罰されることは憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は踏切警手として勤務していた者であり、何らかの事故に関連して刑事責任を問われた。被告人側は、自分が踏切警手であったという理由の…