上告理由の明示を欠いて不適法であるとされた事例
刑訴法386条1項2号
判旨
上告趣意書において単に原判決に不服がある旨を記載するのみでは、刑事訴訟規則240条が定める上告理由の具体的な明示を欠くものとして、上告を棄却すべきである。
問題の所在(論点)
上告趣意書に「原判決に不服がある」とのみ記載した場合、刑事訴訟規則240条所定の上告理由の具体的明示にあたるか。すなわち、当該趣意書の提出が適法な方式に違反するか(刑事訴訟法386条1項2号)が問題となる。
規範
刑事訴訟規則240条は、上告趣意書には「刑事訴訟法に定める上告の理由を具体的に明示」しなければならない旨を規定している。したがって、不服の対象やその法的根拠を具体的に特定せず、単なる不服の表明に留まる書面は、適法な方式を具備したものとは認められない。
重要事実
被告人が自ら作成した上告趣意書において、原判決(控訴審判決)に不服がある旨のみを記載し、法が定める具体的な上告理由(憲法違反、判例違反等)を一切明示せずに提出した事案である。
あてはめ
本件における被告人の記載は、単に「原判決に不服がある」という抽象的な意思表示に過ぎない。これは上告審の審査対象となるべき具体的な事由を何ら特定していないため、刑事訴訟規則240条が要求する「具体的明示」の要件を欠いているといえる。よって、上告趣意書の提出方式としては著しく不備があるものと解される。
結論
本件上告趣意書の提出は、刑事訴訟規則240条所定の方式に違反し不適法であるため、刑事訴訟法414条・386条1項2号に基づき、上告を棄却すべきである。
実務上の射程
刑事訴訟の実務において、上告趣意書の必要的記載事項に関する厳格な形式性を確認するものである。答案上では、上告趣意書の不備を理由とする上告棄却決定の根拠として、規則240条違反を指摘する際に用いる。
事件番号: 昭和46(あ)1001 / 裁判年月日: 昭和46年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が上告趣意書と題する書面を提出しても、そこに具体的な上告理由の記載がない場合には、上告の申立ては不適法として棄却される。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立て、期限内に「上告趣意書」という標題の書面を裁判所に提出した。しかし、その書面の中身には、適法な上告理由となる事項が一切記載されてい…