爆発物取締罰則一条、三条の合憲性
爆発物取締罰則1条,爆発物取締罰則3条
判旨
爆発物取締罰則にいう「治安ヲ妨ケ」るの概念は憲法31条に違反するほど不明確とはいえず、また伝聞証拠の証拠採用を認める刑事訴訟法321条1項2号前段も憲法37条2項に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 爆発物取締罰則における「治安ヲ妨ケ」るという概念は、憲法31条の要求する明確性の原則に抵触するか。 2. 刑事訴訟法321条1項2号前段の規定により伝聞証拠に証拠能力を認めることは、憲法37条2項の証人尋問・反対尋問権を侵害するか。
規範
1. 刑罰法規の規定が憲法31条にいう適正な手続の下での処罰に反するか否かは、その概念が通常の判断能力を有する一般人の理解において具体的になされるべき内容を読み取れる程度に明確であるかによって判断される。 2. 憲法37条2項は証人への反対尋問権を保障するが、証人尋問を妨げるやむを得ない事情がある場合に、一定の証拠能力の要件を定めて供述録取書面を証拠とすることは憲法上許容される。
重要事実
被告人が爆発物取締罰則違反等の罪に問われた事案において、弁護人は同罰則1条および3条の「治安ヲ妨ケ」るという構成要件が不明確であり憲法31条に違反すると主張した。また、原審が刑事訴訟法321条1項2号前段を適用して検察官面前調書等の証拠能力を認めたことについて、被告人の反対尋問権を侵害し憲法37条2項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 「治安ヲ妨ケ」るという概念は、爆発物の危険性や公共の安全という法の趣旨から照らせば、その意味内容は十分に明確であり、不明確とはいえない。 2. 刑事訴訟法321条1項2号前段が定めるような、証人として尋問することを妨げるやむを得ない事情(供述不能等)がある場合に、反対尋問の機会を与え得ない者の書面を証拠とすることは、公正な裁判の実現のために必要であり、反対尋問権を絶対的に保障しなければならないものではない。
結論
1. 爆発物取締罰則の規定は憲法31条に違反しない。 2. 刑事訴訟法321条1項2号前段の規定は憲法37条2項に違反しない。
実務上の射程
刑罰法規の明確性の原則に関するリーディングケースの一つである。答案上では、条文の文言が多義的・抽象的である場合に、通常の判断能力を基準に判断すべきとする枠組みを示す際に用いる。また、伝聞例外規定の合憲性を基礎付ける際にも引用可能である。
事件番号: 昭和56(あ)601 / 裁判年月日: 昭和57年9月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が起訴されていない事実(余罪)を、実質上処罰する趣旨で量刑の資料として考慮することは、不告不理の原則や適正手続に反し許されない。 第1 事案の概要:被告人らが上告した事案において、弁護人は「原判決が余罪を実質的に処罰する趣旨で量刑の資料として考慮した」ことが憲法31条、38条3項、39条およ…
事件番号: 昭和53(あ)1760 / 裁判年月日: 昭和55年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則は現行憲法施行後も法律としての効力を有し、「治安ヲ妨ケ」等の概念もあいまいで不明確とはいえず、憲法19条、31条、36条等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、爆発物取締罰則違反の罪で起訴された。これに対し被告人側は、同罰則が法律としての効力を欠くこと、また「治安ヲ妨ケ」等の…