動労鳥栖駅事件上告審決定
判旨
鉄道営業法42条に基づく鉄道係員の排除権限は、違反行為の態様・程度に照らし真にやむを得ない場合に必要最小限度の有形力行使を含むが、身体に対する直接の実力行使(強制)までは原則として許されない。もっとも、人体で人垣を作り対象者を押し下げる程度の行為は、積極的な直接の実力行使に当たらず、同条に基づく適法な職務執行の範囲内となり得る。
問題の所在(論点)
鉄道営業法42条1項に基づく「排除」の権限として、鉄道係員による有形力の行使がどの程度まで認められるか。特に、人垣による押し下げ行為が適法な職務執行の範囲内といえるかが問題となる。
規範
鉄道営業法42条1項が定める鉄道係員の排除権限は、対象者の違反行為の態様、程度等に照らして真にやむを得ない場合における必要最小限度の有形力の行使を含む。しかし、対象者の身体に対する直接の実力行使による強制は原則として許されず、これが必要な場合は警察官の援助を求めるべきである。ただし、警察官の援助を求める余裕がないときには、正当防衛または緊急避難として法律上許される限度において実力行使が正当化される。
重要事実
組合員らが、急行列車の到着前方において線路内の枕木付近でスクラムを組むピケッティングを行っていた。これに対し、鉄道公安職員らは、列車が安全に通行できるよう、車両接触限界外まで組合員らを両手などで押し下げた。さらに、組合員が近づかないよう線路に沿って人垣を作って並んだ(いわゆる逆ピケ)。この際、手足を取って引きずり出すような積極的な実力行使は行われなかった。
あてはめ
本件における鉄道公安職員の行為は、人体による人垣を作って組合員を軌条外に排除したにとどまるものである。これは有形力の行使ではあるが、組合員の手足を取って引きずり出すなどの積極的な身体への直接の実力行使とはいえない。したがって、当時の状況(列車の進入という危険)に照らせば、真にやむを得ない必要最小限度の範囲内であり、適法な職務の執行であると解される。
結論
本件排除行為は鉄道営業法42条1項に基づく適法な職務執行であり、これに抵抗する行為について違法性が阻却されることはない(原判決に法令違反はない)。
実務上の射程
行政上の強制権限における有形力行使の限界を画した事例。直接的な「強制」に至らない程度の「人垣による阻止・押し下げ」であれば、法律上の排除権限の範囲内として公務執行妨害罪の客体となる「適法な公務」に該当することを示す際に活用できる。
事件番号: 昭和47(あ)2295 / 裁判年月日: 昭和49年7月4日 / 結論: 棄却
争議行為に際して行なわれた犯罪構成要件該当行為について刑法上違法性阻却事由の有無を判断するにあたつては、その行為が争議行為に際して行なわれたものであるという事実をも含めて、当該行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かが判定されなければならない(最高裁昭和四三…
事件番号: 昭和41(あ)1510 / 裁判年月日: 昭和43年3月7日 / 結論: 棄却
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