所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)七〇条一〇号、六三条と憲法三一条、三五条、三八条
所得税法(昭和40年法律第33号による改正前のもの)63条,所得税法(昭和40年法律第33号による改正前のもの)70条,所得税法(昭和40年法律第33号による改正前のもの)10条,憲法31条,憲法35条,憲法38条
判旨
所得税法に基づく収税官吏の質問検査権は、その性質や目的、手続に照らし、憲法31条、35条、38条に違反せず、社会通念上相当な限度内で行われる限り適法である。
問題の所在(論点)
所得税法に基づく質問検査規定(旧法63条、70条10号)が、供述拒否権の侵害(憲法38条)、令状主義(憲法35条)、適正手続・明確性原則(憲法31条)に違反し、違憲ではないか。
規範
行政調査としての質問検査権の行使が憲法31条、35条、38条に違反するか否かは、調査の趣旨・目的、対象となる情報の性質、及び強制の態様を総合考慮して判断する。刑事手続への転用を目的とせず、適正な課税の実現という行政上の目的に必要な範囲内において、社会通念上相当な限度で行われる限り、令状なく行い、かつ不協力に刑罰を科す制度であっても合憲である。また、規定の内容が適用場面において明確であれば、憲法31条の適正手続に反しない。
重要事実
収税官吏Aは、旧所得税法63条に基づき、被告人に対して質問検査を実施した。被告人がこれに協力しなかったため、同法70条10号(質問検査拒否等の罪)に基づき起訴された。被告人側は、同法が令状なき強制を認め、かつ刑罰を背景に供述を強いるものであるとして、憲法31条、35条、38条、および罪刑法定主義(明確性の原則)への抵触を主張して上告した。
あてはめ
質問検査制度は、適正な課税を確保するという行政目的のために設けられたものであり、刑事責任の追及を目的とするものではない。本件における収税官吏Aの検査は、記録に照らせば、行政調査としての社会通念上相当な限度内のものであったと認められる。また、刑罰規定の内容となる旧所得税法63条は、本件への適用場面においてその内容が不明確であるとは言えず、過酷で不合理な刑罰を科しているとも認められない。
結論
旧所得税法の質問検査規定は合憲であり、本件検査も適法であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
行政調査と強制捜査の限界が争われる事案(いわゆる川崎民商事件判決を踏襲)において、基準として引用する。憲法上の論点として「実質的な刑事手続への流用」が認められない限り、社会通念上相当な範囲での行政調査は広く認められる。答案では、調査の態様が「社会通念上相当な限度」を超えていないか、事実認定に基づいて論じる際に活用する。
事件番号: 昭和45(あ)2339 / 裁判年月日: 昭和48年7月10日 / 結論: 棄却
一 所得税法二三四条一項は、同法二四二条八号の罪の構成要件の規定として、その意義が明確を欠くものではない。 二 所得税法二三四条一項にいう「納税義務がある者」とは、課税要件がみたされて客観的に納税義務が成立し、いまだ最終的に適正な税額の納付を終了していない者および当該課税年が開始して課税の基礎となる収入の発生があり、将…