所得税法第三八条、第六九条の三(いずれも昭和二七年三月三〇日法律第五三号による改正前のもの)は憲法第一四条第一項、第一八条、第二九条第一項、第三項に違反しない。
所得税法第三八条、第六九条の三(いずれも昭和二七年三月三〇日法律第五三号による改正前のもの)は憲法第一四条第一項、第一八条、第二九条第一項、第三項に違反するか
所得税法(昭和27年3月30日法律53号による改正前のもの)38条,所得税法(昭和27年3月30日法律53号による改正前のもの)69条の3,憲法14条1項,憲法18条,憲法29条1項,憲法29条3項,憲法30条,憲法84条
判旨
所得税の源泉徴収制度は、国・納税者・徴収義務者の三者に利益をもたらす能率的かつ合理的な徴収方法であり、公共の福祉の要請にかなうため、憲法14条、18条、29条に違反しない。
問題の所在(論点)
所得税法上の源泉徴収制度は、徴収義務者に特別の義務を課す点において憲法14条(法の下の平等)、18条(奴隷的拘束の禁止)、29条(財産権)に違反するか。
規範
租税は最も能率的・合理的な方法により徴収されるべきであり、所得の種類や態様の差異に応じた徴収方法の区別は、合理的理由がある限り憲法14条に反しない。また、徴収義務者の負担が公共の福祉の要請に基づくものである場合、憲法29条(財産権)や憲法18条(奴隷的拘束からの自由)に抵触せず、29条3項の補償も要しない。
重要事実
源泉徴収義務者である上告人が、所得税法における源泉徴収に関する規定について、①給与所得者と事業所得者の差別(14条違反)、②徴収義務者への過重な負担(18条、29条違反)、③財産権侵害に対する補償の欠如(29条3項違反)等を理由に違憲性を主張して上告した事案。
あてはめ
①14条について:給与支払者は支払相手方と密接な関係にあり、徴税上の特別の便宜と能率を有するため、徴税義務者とすることは合理的理由がある。②29条について:本制度は税収確保、徴税費用の節約、納税者の事務軽減に資し、能率的かつ合理的であって公共の福祉の要請に応えるものである。したがって、徴収事務に伴う負担は憲法30条・84条に由来する租税制度の一環としての義務であり、29条1項に反せず、3項の補償も不要である。③18条について:徴税事務に伴う負担は社会生活上の義務として合理的な範囲内であり、奴隷的拘束や苦役には当たらない。
結論
源泉徴収制度は合憲であり、上告を棄却する。
実務上の射程
租税法上の区別や義務負担の違憲性が争われる際のリーディングケース。公共の福祉による制限が「能率性・合理性」という基準で肯定される枠組みを示しており、財産権の制約が納税義務に伴う附随的義務とされる場合の判断指標となる。
事件番号: 昭和49(あ)1032 / 裁判年月日: 昭和51年3月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所得税法に基づく収税官吏の質問検査権は、その性質や目的、手続に照らし、憲法31条、35条、38条に違反せず、社会通念上相当な限度内で行われる限り適法である。 第1 事案の概要:収税官吏Aは、旧所得税法63条に基づき、被告人に対して質問検査を実施した。被告人がこれに協力しなかったため、同法70条10…