判旨
道路運送法の免許基準に適合しないことを理由に免許申請を却下した処分が、仮に違憲・無効であったとしても、直ちに申請者が免許を取得したことにはならず、無免許での運送行為の違法性が阻却されるものではない。
問題の所在(論点)
行政当局による免許申請の却下処分が仮に違憲・無効である場合、申請者は「免許を得た者」と同様の地位を享受し、無免許運転による刑事責任(実質的違法性)が否定されるか。
規範
道路運送法が定める自動車運送事業の免許制は、憲法22条1項に違反しない。また、特定の行政処分が違憲・無効であるとしても、その事実によって当然に申請者が「免許を受けた者」と同様の法的地位を取得するわけではなく、無免許営業が直ちに正当化されるものではない。
重要事実
被告人らの属するA共済組合は、企業組合として自動車運送事業の免許申請を行ったが、運輸大臣は同法が定める免許基準に適合しないとしてこれを却下した。被告人らは免許を得ないまま自動車運送事業を営んだため、道路運送法違反で起訴された。被告人側は、当該却下処分は不当かつ違憲であり、無免許運送の実質的違法性が阻却されると主張して上告した。
あてはめ
道路運送法が免許制を採用していることは合憲の範疇である。本件において、A共済組合が同法の免許基準に適合していなかった点は原判決の認定通りである。仮に当該却下処分が違憲・無効であったとしても、それは処分の効力の有無に止まり、申請者が「免許を取得する」という積極的な効果を生じさせるものではない。したがって、被告人らが免許保持者と同様に取り扱われるべき根拠はなく、無免許で行われた運送行為の違法性は阻却されない。
結論
免許申請の却下処分が違憲・無効であっても、当然に免許取得の効果が生じるわけではなく、無免許運送罪の成立は妨げられない。上告棄却。
実務上の射程
行政処分の違憲性を理由に刑事罰を免れようとする抗弁を否定した事例。行政争訟を通じた救済と刑事責任の帰趨を区別する。道路運送法以外の免許制・許可制事犯においても、実質的違法性の阻却を論じる際の否定的な先例として活用できる。
事件番号: 昭和37(あ)346 / 裁判年月日: 昭和39年1月30日 / 結論: 棄却
道路運送法第四条第一項、第一二八条第一号が憲法第二二条第一項に違反するものでないこと当裁判所大法廷の判例(昭和三五年(あ)第二八五四号同三八年一二月四日判決)の趣旨に徴し明らかである。
事件番号: 昭和60(あ)528 / 裁判年月日: 昭和60年11月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】運転免許拒否処分の根拠規定や当該処分が違憲であったとしても、直ちに免許を取得した状態となるわけではないため、無免許運転罪の成否に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反(無免許運転)の罪で起訴された。弁護人は、免許拒否処分の根拠となる道路交通法90条1項但書の規定、および実際に…
事件番号: 昭和39(あ)979 / 裁判年月日: 昭和40年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路運送法における事業の許可制および無許可営業に対する罰則規定は、公共の福祉に基づく正当な制限であり、憲法14条および22条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が道路運送法に基づく許可を受けずに、同法4条ないし6条の2等に規定される事業(自動車運送事業等)を行ったとして、同法128条の3第…