無免許運転の罪に係る事件において、免許拒否を定めた道路交通法九〇条一項但書の規定及び当該免許拒否処分の違憲(一三条、三一条、三七条、三九条)を主張することの適否
憲法13条,憲法31条,憲法37条,憲法39条,道交法90条1項
判旨
運転免許拒否処分の根拠規定や当該処分が違憲であったとしても、直ちに免許を取得した状態となるわけではないため、無免許運転罪の成否に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
免許拒否処分の根拠規定や処分自体が違憲である場合、そのことが無免許運転罪(道路交通法違反)の成否に影響を及ぼすか。
規範
行政処分の根拠法令や処分自体に違憲の疑いがある場合であっても、当該違憲性が刑事被告人の現在の法的地位(免許の取得等)を直ちに形成するものでない限り、刑事罰の成否という結論に影響を及ぼさないため、上告理由としての違憲主張は不適法となる。
重要事実
被告人は道路交通法違反(無免許運転)の罪で起訴された。弁護人は、免許拒否処分の根拠となる道路交通法90条1項但書の規定、および実際になされた免許拒否処分が憲法13条、31条等に違反し無効であるから、無免許運転罪は成立しないと主張して上告した。
あてはめ
仮に道路交通法90条1項但書や本件免許拒否処分が違憲であったとしても、道路交通法90条1項本文および92条1項の規定に照らせば、被告人が当然に運転免許を取得したという法的結果が生じるわけではない。したがって、被告人が免許を有しない状態で運転した事実に変わりはなく、違憲の有無は無免許運転罪の成否という結論を左右しない。
結論
免許拒否処分の違憲性は無免許運転罪の成否に影響しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
行政処分の公定力や刑事裁判における先決問題の文脈で検討されるべき事案。刑事被告人が「行政処分が違憲・違法であるから、本来認められるべき法的地位(免許保持等)があるはずだ」と主張しても、その主張が直ちに刑事罰の構成要件(無免許)を否定しない限り、裁判所は憲法判断に踏み込まないという抑制的姿勢を示す。
事件番号: 昭和47(あ)2391 / 裁判年月日: 昭和49年9月27日 / 結論: 棄却
運転免許拒否の処分に不服がある場合には行政訴訟を提起してその是正を求めるのが先決であり、無免許運転行為に対する刑事裁判手続において運転免許を与えられないことが違憲であるとの主張は許されない。
事件番号: 昭和38(あ)2187 / 裁判年月日: 昭和40年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路運送法の免許基準に適合しないことを理由に免許申請を却下した処分が、仮に違憲・無効であったとしても、直ちに申請者が免許を取得したことにはならず、無免許での運送行為の違法性が阻却されるものではない。 第1 事案の概要:被告人らの属するA共済組合は、企業組合として自動車運送事業の免許申請を行ったが、…