酒気帯び運転禁止処罰と酒類の販売許容とは関係がないとして違憲(二五条一項、二項、九八条、九九条)の主張が前提を欠くとされた事例
憲法25条,道交法65条1項,道交法119条1項7の2
判旨
酒類の販売を国家が許容していることと、車両の酒気帯び運転を禁止し処罰することは、法的に無関係な事柄である。したがって、酒類販売の許容を理由に、酒気帯び運転の処罰を憲法25条等に反し違憲とすることはできない。
問題の所在(論点)
国家が酒類の販売を法律上認めている場合に、車両の酒気帯び運転を禁止して刑事罰を科すことが、憲法25条(生存権)等の趣旨に照らして違憲となるか。
規範
国家による酒類販売の許容(経済的自由や行政上の許認可)と、道路交通の安全を目的とした酒気帯び運転の禁止・処罰(刑事罰による規制)は、各々独立した法目的を有する別個の事柄である。一方の存在が他方の規制の合憲性や有効性を否定する根拠とはならない。
重要事実
被告人は酒気帯び運転の罪に問われたが、弁護人は、国家が酒類の販売を許容(免許制等)しながら、その一方で酒を飲んで運転することを禁止し処罰するのは、憲法25条(生存権)等に違反する矛盾した法運用であると主張して上告した。
あてはめ
酒類の販売という経済活動の許容と、酒気帯び運転という公共の危険を生じさせる行為の禁止は、法的に直接の関連性がない。国家が酒類の流通を認めているからといって、無制限な飲酒後の運転までを保障するものではなく、公共の福祉(交通の安全)に基づく規制は正当化される。したがって、販売許容と処罰禁止の間に論理的な矛盾は存在しない。
結論
本件上告は理由がなく、酒気帯び運転の処罰規定は合憲である。
実務上の射程
生存権等の抽象的権利を根拠に、他の法令による規制の合理性を否定しようとする主張(いわゆる「前提を欠く主張」)を退ける際の簡潔な論拠として機能する。司法試験においては、行政上の規制と刑事罰の目的の差異を強調する文脈で参照し得る。
事件番号: 昭和60(あ)528 / 裁判年月日: 昭和60年11月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】運転免許拒否処分の根拠規定や当該処分が違憲であったとしても、直ちに免許を取得した状態となるわけではないため、無免許運転罪の成否に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反(無免許運転)の罪で起訴された。弁護人は、免許拒否処分の根拠となる道路交通法90条1項但書の規定、および実際に…