無免許運転被告事件において免許拒否を定めた道路交通法九〇条一項但書の規定違憲(一三条、二二条、三一条)の主張が原判決の結論に影響を及ぼさないとして不適法とされた事例
憲法13条,憲法22条,憲法31条,道交法90条1項
判旨
道路交通法の免許拒否条項が仮に違憲であっても、当然に免許を取得した結果となるわけではないため、無免許運転の罪の成否には影響しない。
問題の所在(論点)
運転免許の拒否に関する道路交通法90条1項但書きが違憲である場合、免許を受けずに運転した行為について無免許運転の罪が成立しなくなるか。
規範
上告理由としての憲法違反の主張は、それが判決の結論に直接影響を及ぼすものでなければならない。前提となる行政処分の根拠規定が仮に違憲であったとしても、その結果として当然に特定の公法上の地位(本件では運転免許の取得)が発生しない場合には、刑事被告事件の犯罪成立の可否には影響しない。
重要事実
被告人は運転免許を受けずに自動車を運転し、道路交通法違反(無免許運転)に問われた。これに対し弁護人は、運転免許の拒否事由を定める道路交通法90条1項但書きが憲法13条、22条、31条に違反し無効であるから、無免許運転の罪は成立しないと主張して上告した。
あてはめ
道路交通法90条1項本文および92条1項の規定によれば、仮に免許拒否の規定が違憲であるとしても、それによって直ちに被告人が運転免許を取得したという法的効果が生じるわけではない。被告人が現に免許を受けていない以上、拒否条項の違憲性の有無は無免許運転の事実関係やその違法性・有責性に影響を与えるものではない。したがって、当該主張は判決の結論に何ら影響を及ぼさない。
事件番号: 昭和60(あ)528 / 裁判年月日: 昭和60年11月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】運転免許拒否処分の根拠規定や当該処分が違憲であったとしても、直ちに免許を取得した状態となるわけではないため、無免許運転罪の成否に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反(無免許運転)の罪で起訴された。弁護人は、免許拒否処分の根拠となる道路交通法90条1項但書の規定、および実際に…
結論
無免許運転の罪の成否には影響しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
行政処分の根拠規定の違憲性を刑事訴訟で争う際の「訴えの利益」や「結論への影響」を判断する際の基準となる。免許のように行政庁の付与行為(許可)を介在させる仕組みにおいては、拒否条項が違憲でも「許可がある状態」にはならないため、無免許状態は解消されないという論法として活用できる。
事件番号: 昭和47(あ)2391 / 裁判年月日: 昭和49年9月27日 / 結論: 棄却
運転免許拒否の処分に不服がある場合には行政訴訟を提起してその是正を求めるのが先決であり、無免許運転行為に対する刑事裁判手続において運転免許を与えられないことが違憲であるとの主張は許されない。
事件番号: 昭和38(あ)2187 / 裁判年月日: 昭和40年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路運送法の免許基準に適合しないことを理由に免許申請を却下した処分が、仮に違憲・無効であったとしても、直ちに申請者が免許を取得したことにはならず、無免許での運送行為の違法性が阻却されるものではない。 第1 事案の概要:被告人らの属するA共済組合は、企業組合として自動車運送事業の免許申請を行ったが、…