運転免許を与えられないことに不服があれば、運転試験拒否処分ないし適性不合格処分を対象として、行政訴訟によりこれを争うのが筋道であり、その手続によることなく無免許運転行為を敢てしながら、運転免許が与えられないことを違法であるとして自己の行為を正当づけることはできず、所論違憲の主張の当否にかかわりなく、無免許運転の罪が成立する。
無免許運転行為に対する刑事裁判手続において運転免許を与えられないことが違憲(一四条、二二条違反)であると主張することの適否
憲法14条,憲法22条,刑訴法405条1号
判旨
運転免許制度における運転資格は、免許証の交付によって初めて発生するため、免許拒否規定が憲法に違反するか否かにかかわらず、免許を受けずに運転すれば無免許運転罪が成立する。
問題の所在(論点)
免許欠格事由を定める規定が憲法に違反する場合、免許を受けずに運転した行為について無免許運転罪の成立が否定されるか。
規範
道路交通法の定める運転免許制度の下では、運転資格は運転免許証の交付を受けることによって初めて発生する。免許の拒否処分等に不服がある場合は行政訴訟等で争うべきであり、適法な免許を受けないまま運転した以上、免許制限規定の違憲性の有無にかかわらず無免許運転罪(同法64条等)が成立する。
重要事実
聴覚障害を持つ被告人が、自動二輪車の運転免許試験において「耳がきこえない者」を欠格事由とする規定(道交法88条1項2号等)により免許を得られない状況下で、あえて自動二輪車を無免許で運転した。被告人は、当該免許制限規定が憲法14条(平等権)や22条(職業選択の自由・居住移転の自由)に違反し無効であるから、無免許運転は罪にならないと主張した。
あてはめ
被告人は、免許拒否の根拠となる法令が違憲であると主張するが、道交法92条1項によれば運転資格は免許証の受給により創設される。たとえ拒否規定が違憲であったとしても、そのことによって当然に運転資格が付与された状態になるわけではない。被告人が適法に免許を取得していない事実に変わりはなく、緊急避難等の違法性阻却事由も認められない以上、無免許運転の構成要件を充足し、違法性も否定されない。免許取得を拒否されたことに不服があるならば、行政訴訟によりその処分の是非を争うべきであり、自ら無免許運転を敢行することを正当化する余地はない。
結論
被告人に無免許運転罪が成立する。免許制限規定の違憲性の主張は、刑事被告事件の結論に影響を及ぼさない。
実務上の射程
行政処分の公定力や運転免許の形成的性質を前提とする。刑事事件において、前提となる行政規定の違憲性を争うことで構成要件該当性や違法性を否定しようとする主張を封じる際に有効な法理である。ただし、現在は聴覚障害者の免許取得に関する規定は改正されているため、本判決は制度論の適否ではなく、無免許運転罪の成立要件に関する一般的判断枠組みとして引用すべきである。
事件番号: 昭和61(あ)33 / 裁判年月日: 昭和61年4月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路交通法の免許拒否条項が仮に違憲であっても、当然に免許を取得した結果となるわけではないため、無免許運転の罪の成否には影響しない。 第1 事案の概要:被告人は運転免許を受けずに自動車を運転し、道路交通法違反(無免許運転)に問われた。これに対し弁護人は、運転免許の拒否事由を定める道路交通法90条1項…
事件番号: 昭和60(あ)528 / 裁判年月日: 昭和60年11月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】運転免許拒否処分の根拠規定や当該処分が違憲であったとしても、直ちに免許を取得した状態となるわけではないため、無免許運転罪の成否に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反(無免許運転)の罪で起訴された。弁護人は、免許拒否処分の根拠となる道路交通法90条1項但書の規定、および実際に…