運転免許拒否の処分に不服がある場合には行政訴訟を提起してその是正を求めるのが先決であり、無免許運転行為に対する刑事裁判手続において運転免許を与えられないことが違憲であるとの主張は許されない。
無免許運転行為に対する刑事裁判手続において運転免許を与えられないことが違憲(一三条、一四条違反)であると主張することの適否
憲法13条,憲法14条
判旨
運転免許申請を拒否する行政処分の違憲性は、直ちに無免許運転罪の成否に影響を及ぼさない。また、無免許運転における緊急避難や期待可能性の欠如は、差し迫った危難等の具体的状況がない限り認められない。
問題の所在(論点)
1. 運転免許拒否処分の違憲性が、無免許運転罪の成否に影響を及ぼすか。 2. 無免許運転について、緊急避難(刑法37条1項)または期待可能性の欠如による責任阻却が認められるか。
規範
1. 運転免許拒否処分の違憲性の主張については、行政訴訟による是正が先決であり、仮に処分が違憲であっても直ちに免許取得の効力が生じるわけではないため、刑事罰の成否に影響しない。 2. 違法性阻却事由(緊急避難)の成否は「差し迫った危難」の有無により、責任阻却事由(期待可能性)の成否は「他に適法な方法をとることを期待できない事情」の有無により判断する。
重要事実
被告人は、運転免許の申請を拒否された状態(欠格事由該当を理由とするものと推察される)で自動車を運転し、道路交通法違反(無免許運転)に問われた。被告人は、免許拒否処分が憲法13条・14条に違反し無効であること、および本件運転行為には違法性阻却事由または責任阻却事由が存在することを主張して上告した。
あてはめ
1. 免許拒否処分が仮に違憲であっても、被告人が当然に免許を取得した状態になるわけではない。したがって、処分の違憲性は本件無免許運転の罪の成否を左右しない。 2. 記録上、被告人が運転せざるを得なかった「差し迫った危難」と目すべき事情は存在しない。また、タクシーの利用や他者への依頼など、運転以外の代替手段を講じることが不可能であったとは認められず、適法行為に出ることを期待できない事情も存在しない。
結論
被告人の本件行為について無免許運転罪の成立を認めた原判決に憲法違反はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
行政処分の公定力や先行行為の適法性が刑事罰の構成要件に及ぼす影響を検討する際の参考となる。特に「処分が違憲でも直ちに権利は発生しない」という論理は、無届け営業や無免許行為の弁護への反論として有用である。また、緊急避難等の一般的要件を厳格に適用する実務姿勢を示している。
事件番号: 昭和60(あ)528 / 裁判年月日: 昭和60年11月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】運転免許拒否処分の根拠規定や当該処分が違憲であったとしても、直ちに免許を取得した状態となるわけではないため、無免許運転罪の成否に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反(無免許運転)の罪で起訴された。弁護人は、免許拒否処分の根拠となる道路交通法90条1項但書の規定、および実際に…
事件番号: 昭和38(あ)2187 / 裁判年月日: 昭和40年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路運送法の免許基準に適合しないことを理由に免許申請を却下した処分が、仮に違憲・無効であったとしても、直ちに申請者が免許を取得したことにはならず、無免許での運送行為の違法性が阻却されるものではない。 第1 事案の概要:被告人らの属するA共済組合は、企業組合として自動車運送事業の免許申請を行ったが、…