詐欺の事実に刑法二四九条を適用した法令適用の誤りが著しく正義に反しないとされた事例
判旨
銀行窓口において係員を欺罔して現金を交付させた行為は、刑法246条1項の詐欺罪を構成し、恐喝罪(249条1項)を適用することは法適用の誤りである。
問題の所在(論点)
銀行係員を欺罔して現金を交付させた行為について、刑法249条1項(恐喝罪)を適用した第一審判決の法令適用の正否。
規範
人を欺いて財物を交付させた場合には、刑法246条1項の詐欺罪が成立する。これに対し、人を畏怖させて財物を交付させた場合には、刑法249条1項の恐喝罪が成立する。両者は実行行為の態様(欺罔か脅迫か)によって区別されるべきである。
重要事実
被告人は、A信用金庫B支店において、同店係員Cを欺罔した。これにより、係員Cから現金50万円の交付を受け、これを騙取した。
あてはめ
本件において、被告人は係員を「欺罔」して現金を交付させている。これは詐欺罪(246条1項)の構成要件に該当する行為であり、恐喝罪(249条1項)の構成要件である「脅迫」や「畏怖」に基づく交付ではない。したがって、本件行為に恐喝罪を適用した第一審判決には法令適用の違法がある。
結論
本件行為には刑法246条1項(詐欺罪)を適用すべきであり、同法249条1項(恐喝罪)を適用した点に違法があるが、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められないため、上告は棄却される。
事件番号: 昭和47(あ)1113 / 裁判年月日: 昭和48年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐欺罪(刑法246条)が成立するためには、被欺罔者が財産的処分行為をすべき権限または地位を有していることを要する。 第1 事案の概要:被告人が共犯者Aらと共謀し、何らかの欺罔行為を用いて財物を交付させた事案。弁護人は、被欺罔者が財産的処分行為をすべき権限または地位を有していなかったとして、詐欺罪の…
実務上の射程
欺罔行為によって財物を交付させた場合に誤って恐喝罪の条文を適用することは、構成要件の性質上、明らかな法令適用の誤りとなる。答案上は、実行行為の態様を正確に分析し、欺罔(詐欺)か脅迫(恐喝)かを峻別して条文を選択する必要があることを示す。なお、本判決は職権判断として示されたものである。
事件番号: 昭和26(あ)3186 / 裁判年月日: 昭和26年12月14日 / 結論: 棄却
刑法第二四六條第一項に定める財物の騙取とは、犯人の施用した欺罔手段により他人を錯誤に陥れ、財物を犯人自身又はその代人若しくは第三者に交付せしむるか或はこれ等の者の自由支配内に置かしむることをいう。
事件番号: 昭和26(あ)1640 / 裁判年月日: 昭和27年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】虚偽の書面を作成・行使して他人を欺罔し財物を交付させた場合、たとえ私文書偽造・同行使罪の成立が否定されたとしても、詐欺罪(刑法246条)が成立することに妨げはない。 第1 事案の概要:被告人は、虚偽の内容を含む書面を作成し、これを用いて相手方を欺き、金員等の交付を受けたとされる事案。第一審判決は私…